110話 ページ32
電源を落としていた通信機の電源を入れる。
ザザ、と小さなノイズ音が聞こえる。感度は良好の様だ。
「───誰か、聞こえるか」
『！！ A！？無事か！？』
この声は緑川だろうか。通信機越しだと、男の声だと特に聴き分けにくくなるんだが、この声的には多分緑川だろう。
「無事だよ。大丈夫五体満足だから。
犯人は確保。…というよりほぼ投降だな。爆弾のボタンは回収済みだ。抵抗の意思もない。あと爆処理班と刑事課の何人かは花菱氏の自宅に向かわせて。ご家族の安全を優先にな。そこにも爆弾が仕掛けられてる」
『は！？花菱氏の自宅にも！？わ、分かった！松田ー！萩原！』
「それと花菱嶺二もお縄だ。犯人が自供した。……古狸には洗いざらい話してもらおう」
通信機の向こう側がかなり騒がしい。ノイズだけじゃないものまで聞こえてくる。
何だろうかと耳をすませれば、途切れ途切れだが、松田や秀一さんの声が聞こえる様な気がする。
「緑川？なんか騒がしいけど」
『お前のせいだっつーの！お前が1人犯人追いかけて行くから、俺らずっとお前の事心配してたんだぞ！特に零と赤井は抑えるの大変だったんだからな！』
「……ごめん。文句はいくらでも承ろう」
「ああ全くだ。単独行動の上に、犯人に真正面で立ち向かうなんて、無謀にも程があるよな？A」
……今ここにいるはずのない声が聞こえて、錆びついた人形のように首をギギ、と音がするみたいにゆっくりと声がした方向に振り向けば、仁王立ちで降谷が立っていた。
笑顔だが、笑ってない。笑顔だけど。あと背後に般若が見えるけど多分気のせいじゃない。
「ふ、降谷…」
「さて、A。何か弁解は？俺たちに死ぬほど心配させた言い訳でも弁解でも、今なら聞いてやるぞ」
「絶対聞く気無いだろう！？後でちゃんと説教も文句も聞くから！！」
「……全く」
ハァ、と溜息を吐いて、降谷は手錠を取り出した。
ツカツカと男に近寄って手錠をガチャリと填める。
「立てるか」
よろりと立ち上がった男が私の横をすり抜ける前に、小さく、だがたしかに呟いた。
「……ありがとう。」
か細い声だった。
礼を言われる様なことなんて、なにも。礼を黙殺するが、それでいいのだ。わたしにはそれに返せる言葉を持ち合わせてもいないし、言う権利もない。
ただ当然の事をしたのだ。
感謝するのなら、自分の妻に。最期までお前を愛していた妻に向けて言ってくれ。
「……生きて。」
そして償ってくれ。
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るか(プロフ) - 続編と番外編が気になりすぎてて夜も寝れないくらい気になってます！！パスワードを教えていただきたいのですが可能でしょうか、？ (5月7日 4時) (
レス) id: 50222dda5e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか？ (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか？？ (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか？作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥
| 作成日時：2017年12月16日 21時
