97話 ページ19
結局、どうしようもないまま、そのままの格好で潜入捜査をすることになった。
……今までは全く気にしたことなどなかったのに、恋心というものを自覚してから、多少は女らしくあろうと思うようになったのは、人間というものはどうも単純らしい。
まさか私に、そんなものが芽生えるとは思ってもなかったが。
ザワザワと騒がしいパーティー会場の中、降谷の隣に並びながら周囲を警戒する。
依頼者であり主賓の人物、花菱嶺二は風見達が今護衛についている。
私と降谷と、あと何人かの潜入捜査員は会場内の見回りと監視だ。
捜査本部では緑川や秀一さんも、この会場内を防犯カメラで監視している。
(……に、しても。本当に著名人ばかりだな。あの女性なんか、よくテレビで見かける方だ。その他各界の有名な人物までいるとは……)
凄いな、と呑気に周りの著名人や有名人を眺めていると、突然降谷から肩を勢いよく引かれた。半ば降谷にもたれかかるようになってしまい、おそるおそると降谷を見上げると、私の後ろ付近を睨みつけていたような顔を一瞬だけしていたが、私と目があった時はいつも通りの顔に戻った。
「悪い、ぶつかりそうだったから」
「そ、そうか、ごめん、ありがとう降谷」
「気にするな。こういう場では素直に女はエスコートされてるもんだ。あとやっぱり冷やすといけないから、これ羽織っておけ」
そう言って降谷は、私にスーツジャケットを肩に羽織らせてきた。
別に会場内だし、人も多いから、そんな冷えないだろうけれど、でも素直に嬉しかったから礼は言う。
(……降谷の匂いがするな)
心なしか落ち着く匂いだ。
そう思ったところで急に恥ずかしくなり、なんか急激に自分が乙女になっていやしないか…と複雑な気持ちになる。
先程まで降谷が着ていたせいか、スーツが暖かくて思わず気が緩みそうになる。
くそ、なんでこんな気が緩むんだ。いや、そうか。降谷のだからだ。
………私もしかして自分が思ってる以上に、降谷のことが好きなのではないのだろうか。
「いやぁ、青春だな!にしても零積極的じゃないか!」
「降谷くんにしては結構いいんじゃないか?珍しくヘタレてない」
まあ、防犯カメラで全てを秀一さん達は見ていたわけだが。
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るか(プロフ) - 続編と番外編が気になりすぎてて夜も寝れないくらい気になってます!!パスワードを教えていただきたいのですが可能でしょうか、? (5月7日 4時) (レス) id: 50222dda5e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年12月16日 21時