106話 ページ28
「……それは、どこの爆弾のボタンなんだ」
まさかもう1つ別のものがあるだなんて。
男に銃口の照準を合わせるが、きっと逆効果だ。
「……勘違いしてるみたいだけど、俺は確かに花菱宛に脅迫状は送りつけてはいたが、それはあいつが1人騒ぎ立てただけだ。
まあそれも予想済みだったんだけどな。俺はな、別に『花菱嶺二を殺す』だなんて脅迫状を送りつけてはいない」
「…殺すつもりのくせに何を」
「さっきあんた言ったよな、俺にはもう1つ別の目的があるって。その通りだよ、あいつそのものを殺すのは実際二の次。俺がやりたいのはこれからなんだ」
頭の中で必死に考える。
あのボタンは一体どこを爆破されるためのボタンなのか。
恐らくはここでは無いはずだ。十分なほどの爆弾はとうに仕掛けられている。
だとしたら何処に?こいつがこれからやりたいことって、一体、
「俺と同じ思いをすればいい。俺と同じ絶望を味わえばいい。
愛する人間を失った俺の気持ちを。全部奪われた俺の気持ちを、あいつも味わえばいい。
身体だけじゃない、心ごと殺さなきゃ、俺は気が済まないんだよ…!!」
………この男と同じ気持ち。
愛する人間、全部を奪われた。
その単語を繋ぎ合わせて、考え付きたくもない結論に達する。
まさか、こいつは。
「まさかお前ーーー!」
それだけは、それだけはダメだ。
止めようと踏み出そうとしたら、その爆弾のボタンに手をかける素振りを見せて踏み止まる。
「アンタ、本当に察しがいい上に、頭の回転もいいんだな。…花菱、あいつ、本当に優秀な警察に依頼したんだな。そんなに怯えて、守って貰おうとしてーーーあいつの事は殺したくせに、許せない、許せるかよ…!!」
「ッ、やめろ!!」
私の考えがあっているのなら、これで正しいのなら、この男はーーー本当に、花菱を自分と同じ目に遭わせるつもりだ。
花菱に送りつけていたとずっと思い込んでいた脅迫状は、花菱嶺二にではないとしたら、それは花菱以外の人間。つまりは、花菱の家族。
伴侶も子供もーーその全てを、自分が奪われたように、奪う為に。
この男は、花菱の家に爆弾を仕掛けたのだ。
本命は花菱の家族を殺すこと。そして、花菱の心を自分と同じように殺すこと。
それはーーーそれは、お前も、花菱と何ら変わりない、人でなしになってしまうだろう。
噛み切りそうなほど唇を噛み締めて、今にもボタンを押しそうな男に銃口の照準を合わせた。
そして、
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ちゅん(プロフ) - 続編と番外編が読みたいのですが、パスワードって教えていただけないのでしょうか? (2022年4月22日 15時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
あいる - 初めまして!!こんな神作初めて出会いました。ほんとにほんとに素敵です。お気に入り作者にしてしまいました。パスワードのヒントと作品にてオススメという形で載せたいのですがダメでしょうか?? (2020年11月14日 23時) (レス) id: 23cef4f251 (このIDを非表示/違反報告)
眠猫 - 番外編のパスワード載ってないので教えてくれないでしょうか?作者作品一覧に載ってるのは違う番外編のパスワードのようなので……… (2019年1月28日 18時) (レス) id: b6571f87b9 (このIDを非表示/違反報告)
神無月(プロフ) - 作者の作品一覧の所にパスワードというか、ヒントが載ってますよ (2018年4月22日 19時) (レス) id: 7b5ab892e2 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 番外編を読みたいのですが、パスワードがわかりません。どうすれば?…… (2018年4月21日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年12月16日 21時