検索窓
今日:39 hit、昨日:23 hit、合計:725,600 hit

77話 ページ41

・降谷視点

「ほんと、君達と一緒にいると、飽きないね」

憑き物が落ちたような、ようやく解放されたような、本心から笑ったAのその笑顔に、10年前の警察学校での卒業式でのことを思い出す。

面と向かって大嫌いだと言ったあの時のAを思い出す。
酷く泣きそうな、しかしそれを寸で抑え込んでいるような顔だった。

……きっと、Aがちゃんと笑えなくなったのは、通り魔の事件だけじゃなくて、俺の言葉のせいなのもあるのだろう。
憎むのがあまりにもお門違いだった。八つ当たりでこいつを笑えなくさせるほど傷付けて、一方的に突っぱねて。
俺の方がよっぽど子供じゃないか。謝らなければいけないのは、俺の方じゃないか。

見てくれないんじゃない、俺がこいつを突き放したんじゃないか。

……それでも、それでもようやく全てから解放されたAのその笑顔が綺麗で、今度は俺の方が泣きそうになる。
その笑顔で、自覚してしまったのだ。ここ10年、きっと本能的には気付いてはいても、無意識に無視し続けていた感情を自覚したのだ。

Aのことが、ずっとずっと好きだったのだと。

愛も憎悪も何もかもが混ざってしまって、何が何だか分からなくなって、混ぜこぜになってしまった感情を嫌いだと認識してしまって。
自分を苛む。どうして、こんなにも気付くのが遅かったのか。どれほど俺はお前を傷付けてしまったのか。

「降谷?」

様子がおかしい俺を見かねたのか、Aが俺を呼ぶ。
大嫌いだったはずのその瞳も何もかも、今では全てが愛おしくて、無意識に伸ばしかけた手を引っ込めた。
俺はお前に、何も謝れていないから。

「気分でも悪い?大丈夫?」

それでも、こいつは俺に手を差し伸べてくれるのだ。
こんな俺に。お前に散々、ひどい言葉を投げてばかりいた、憎まれておかしくないことをした、俺に。

一度は引っ込めた手を伸ばして、俺より小さなその手を掴む。

尚更、それで自覚した。

(……お互い、遠回りしてばかりだな)

……なあA、俺の事、許さなくていいから、今度は俺の話も聞いて欲しいんだ。
謝りたいこともたくさんある。言いたいこともある。
たくさん、お前としたい事があるけれど。

「…なんでもない、行こう」



それでもどうか、今は、この手を握ることだけは、許して欲しい。









×××××××

77話でやっと自覚したよ降谷さんおめでと〜〜!!(白目)
自覚するのがおせーよという作者の正直な気持ちです(書いた本人)

5vs1【番外編】→←76話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (452 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
918人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2017年10月23日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。