77話 ページ41
・降谷視点
「ほんと、君達と一緒にいると、飽きないね」
憑き物が落ちたような、ようやく解放されたような、本心から笑ったAのその笑顔に、10年前の警察学校での卒業式でのことを思い出す。
面と向かって大嫌いだと言ったあの時のAを思い出す。
酷く泣きそうな、しかしそれを寸で抑え込んでいるような顔だった。
……きっと、Aがちゃんと笑えなくなったのは、通り魔の事件だけじゃなくて、俺の言葉のせいなのもあるのだろう。
憎むのがあまりにもお門違いだった。八つ当たりでこいつを笑えなくさせるほど傷付けて、一方的に突っぱねて。
俺の方がよっぽど子供じゃないか。謝らなければいけないのは、俺の方じゃないか。
見てくれないんじゃない、俺がこいつを突き放したんじゃないか。
……それでも、それでもようやく全てから解放されたAのその笑顔が綺麗で、今度は俺の方が泣きそうになる。
その笑顔で、自覚してしまったのだ。ここ10年、きっと本能的には気付いてはいても、無意識に無視し続けていた感情を自覚したのだ。
Aのことが、ずっとずっと好きだったのだと。
愛も憎悪も何もかもが混ざってしまって、何が何だか分からなくなって、混ぜこぜになってしまった感情を嫌いだと認識してしまって。
自分を苛む。どうして、こんなにも気付くのが遅かったのか。どれほど俺はお前を傷付けてしまったのか。
「降谷?」
様子がおかしい俺を見かねたのか、Aが俺を呼ぶ。
大嫌いだったはずのその瞳も何もかも、今では全てが愛おしくて、無意識に伸ばしかけた手を引っ込めた。
俺はお前に、何も謝れていないから。
「気分でも悪い?大丈夫?」
それでも、こいつは俺に手を差し伸べてくれるのだ。
こんな俺に。お前に散々、ひどい言葉を投げてばかりいた、憎まれておかしくないことをした、俺に。
一度は引っ込めた手を伸ばして、俺より小さなその手を掴む。
尚更、それで自覚した。
(……お互い、遠回りしてばかりだな)
……なあA、俺の事、許さなくていいから、今度は俺の話も聞いて欲しいんだ。
謝りたいこともたくさんある。言いたいこともある。
たくさん、お前としたい事があるけれど。
「…なんでもない、行こう」
それでもどうか、今は、この手を握ることだけは、許して欲しい。
×××××××
77話でやっと自覚したよ降谷さんおめでと〜〜!!(白目)
自覚するのがおせーよという作者の正直な気持ちです(書いた本人)
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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年10月23日 18時