75話 ページ39
・神崎視点
ずっとずっと会いたかった人でした。
貴女に会うためだけに、私は今まで必死に勉強して、ここまでやって来たんです。
子供の頃、結局お礼も謝罪の1つもできずに、私は知らない土地へと引っ越してしまった。
確かにあの頃は怯えてしまっていた。外に出るのすら怖くて、暫くは何をするのも親と一緒にいて。
けれど、けれども、あの人にお礼の1つも言えないなんて、そんなのはダメじゃないか。
……いろんな人の協力と縁で、私はとうとうお姉さんと会うに至って、これまでずっと待っていた再会に、私は心底嬉しかったのを、きっと貴女はきっと知らないんでしょう。
10年越しに言えたお礼を言えば、ぼたぼたとお姉さんの両目から涙が溢れていて、ギョッとする。
何か気に障るような事を言ってしまったのかと、今度は私が慌てる番だった。
何か声をかけようと思った瞬間、お姉さんに抱きしめられる。
……10年前と変わらない、私を守るかのような、暖かくて強い抱擁だった。
「ごめん、ごめんなさい。怯えさせてしまって。私も、ずっとそれが謝りたかった」
「…大丈夫です。お姉さんのせいじゃないですよ」
「一目君に逢いたかった。けれど、もう何処かへ行ってしまっていた後だったから、もう、2度と会えないと思ってた。仕方ない事で、終わっていたと思っていたから」
「…私も言うの、遅くなってごめんなさい」
この人もずっと私のことを覚えていたのだと思うと、胸が熱くなる。もし私のこと、覚えていなかったらどうしようなんて考えは杞憂だった。
そんな事、ある訳ないのにね。この人は、誰よりも優しい人だから。
「……よかった、」
ぽつりと漏らされたその声は、抱きしめられていなければきっと聞こえなかったと言うくらい、か細い声だった。
「よかっ、たーーー…!」
心底安堵したような、そして歓喜を滲ませたその声色に、私の目にまたじわじわと涙が溜まっていく。
この10年、この人はずっと私を心配し続けていたのだろう。
嗚咽を漏らしたお姉さんにつられて、私もまた泣き出す。
本当に良かった。ずっと言いたいことが言えた。もう一度、この人に会えることができた。……また抱き締めてくれた。
それだけで、今までの努力や苦しみが報われたのだ。
お姉さん、お姉さん。
私、貴女みたいな警察官に、なりたいです。
指導室の外で、斎藤先生や降谷さんたちが私達の会話を聞いていたことは、もちろん気付くことは無かったけれど。
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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年10月23日 18時