71話 ページ35
・斎藤目線
新しく入った今期の生徒の名簿に目を流していくと、見覚えのある名前で目が止まる。
神崎桜。その名前は、俺にとっては見覚えがあるどころか、10年経った今でも忘れようもない出来事での渦中の人物の名前だった。
10年前のあの雨が酷かった日、俺の生徒が子どもを庇って通り魔に刺された。
その庇った子供の名前こそが、神崎桜だった。
その子供は、あの一件以来怯えてしまって、取り調べ等が落ち着いたあとは遠い街へと引っ越したと聞いていた。
あんな出来事があったのだから、この街には戻って来なければ、この道を選ぶようなことも無いのだろうと。
だから同姓同名だと思っていたのに。
「先生。私のこと、覚えていますか。」
廊下を歩いた時、1人の生徒が俺を呼び止める。
俺を見上げるその顔で、俺は悟ってしまったのだ。少しばかり残っている子供の頃の面影に、こいつは神崎桜本人だと気付いたのだ。
「俺のことよく覚えてたな」
「10年も前だから、私も記憶が朧げだし、殆ど当てずっぽうだったんです。」
「……よく、警察学校に、警察官を志そうと思ったな」
「親にも最初は反対されてました。」
そうだろうな。俺が親だったら反対する。
けれどもどうやら親の反対を押し切って、この街に戻ってきた挙句、高卒で警察学校に入ったみたいだった。
「先生、いつかでいいんです。警察の方が日々忙しいのはわかっているから、私がここに在籍している間に、もう一度、あのお姉さんに会いたいんです」
神崎の真っ直ぐとした瞳が俺を射抜く。
あの時の怯えていた子供の瞳はもうどこにも無かった。目の前には成長して、ここまでやって来た1人の警察官の卵。
「あの人に、会いたい。私がこの道を志したのも、ここに戻って来たのも全て、あの人に会うために戻って来たんです。」
「……そう言われちゃ、俺も俺で手を回すが、数年前から連絡が付かなくなってる。」
「お願いです。先生。」
「わーったよ！元から断る気はねえから！」
そこからは全力で遠山の連絡先と安否を確認したが、何も確認できなかった上に、かつての同期の松田たちにさえ連絡がつかないと来た。
少しばかり諦めかけた時、ようやく繋がった萩原に半ば縋る思いで、これまでの経緯全てを打ち明ける。
何としても遠山を連れて来てほしいと。
「か、神崎桜です。」
……そこからはもう、萩原のファインプレーで今に至るわけだ。
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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです（ ; ; ） (2021年3月7日 14時) (
レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました！ (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは！いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください！ (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません！パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ！脇から失礼しました！ (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥
| 作成日時：2017年10月23日 18時
