44話 ページ4
・降谷視点
顔も見るほど嫌な男の隣に、Aが一緒にやって来て、俺は手に持っていたボールペンを滑り落とした。
任務で暫く日本に滞在するらしい赤井とAは、実は昔からの友人だという事実に頭が殴られたような衝撃がする、
しかも、俺たちより付き合いが長い。
大嫌いな人間同士が一緒にいるのが相当嫌なのか、ずっと俺は赤井とAが話しているのを見ると、無性にイライラする。
いや、違うな。大嫌いだとかそういうのを抜きにしても、気に食わないというか。……上手く言葉に出来ない。なんなんだこれは。
赤井とAは大層仲が良かった。ほんの短時間だが、それだけで、もう、それ相応の信頼関係があるのだとわかってしまった。
互いに軽口を叩き合うのを見て、俺は驚いたのだ。
あんな口が悪いAなんて、見たことがない。あんな饒舌になるAなんて、少なくとも俺は見たことがなくて。
隣にいた緑川も驚いているようで、ぽかんと口を開けている。
どちらかといえばあまり話すほうではないと思っていたのだ。しかし、赤井の前ではあんなにもつらつらと悪態を吐く上に、頬まで抓り合う。
それに、Aは『秀一さん』と名前で呼ぶのだ。
(ーーー何なんだ、それは。)
一度も、名前で呼ばれたことなどない。
何処か俺たちには一線引いている様子で、呼ばれても名字だ。
ギリ、と拳を握り締める。何だ、それは。どうして。
(……その男と、俺とは、どう違うんだ)
見たこともない顔ばかり浮かべて。その男はお前にとって何なんだと。
名前のわからない怒りが俺を支配する。俺は何に憤っているんだ。赤井?A?
いや、そもそも俺は何をそんなに憤っているんだ。別に交友なんて自由だ。どんな接点があろうとも、過去に何があろうとも。
ジトリと赤井を睨みつける。
理由なんてわからない。知らない。けれど、何故だかいつも以上に憎々しく感じて。
(なんなんだ、これ)
未だに頬を抓りあっている赤井とAを緑川が宥めるが、2人は聞く耳を持たなかった。
無性にイライラする。理由なんて、もうどうでも良かった。
ただ気に食わない。そんな男の、何がいいのだと。
「減らず口だけは相変わらずだな。未だに俺に勝てたこともないのに」
「秀一さんそろそろいいお年ですし、私と手合わせしてる時にうっかり腰折りそうですけどね」
「まだ若いぞ俺は」
「痛い痛い痛い」
触るな。
そいつに、触るな。
×××××
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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2017年10月23日 18時