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51話 ページ13

・赤井視点

一度、Aに提案したことがある。
その傷を完全に消すことは出来なくても、綺麗にすることは出来ると。
知り合いのツテがある、女性の身体にこの傷は嫌じゃないのか、と問えば、Aは首を振った。

「それはきっと、許してもらえなくなる。私も許せなくなる。これはあの子に傷を与えてしまった私への戒めです」

「………」

「きっと、降谷だって許してくれない」

……思い出す今まで忘れてしまっていた。当時は降谷くんの存在を知らなかったが、きっと、降谷くんも当事者だったのだろう。
こんな薄い腹を抉られて、自分よりも他人を気にするのか、お前は。
労わるように服の上から傷がある場所を撫でた。

「セクハラですよ」

「服を剥いだ時は何も言わなかったのにか」

「あの時はあの時です。……まあ別に良いですよ、赤井さんは」

あまり意識されていないことを男として悲しむべきか。それともそれ相応の信頼をされていることを喜ぶべきか。
なんとも言えない複雑な心境になってしまって、微妙な顔をしていたらしい俺は、Aに不思議そうな顔をされていた。

「ねえ赤井さん」

「……なんだ」


「誰にも許してなんかもらえないけれど、せめて赤井さんだけは、私を許してくれますか。」


そこで、目を覚ます。

外は薄く光が差し掛かっており、もうすぐ夜明けになるところだった。
肩に頭を預けてすやすやと眠り続けるAの寝顔を見るのはいつぶりだろうか。

「お前はずっと、許されたかったんだな」

先程の過去の夢を思い出す。
今ではあの時の自分はなんて答えたのかは覚えていない。覚えていないから、きっと夢が覚めたのだろう。
Aは降谷くんには許してもらえることを望んでいないのだろう。望んではない。けれどきっと心の何処かでは辛いと思っていたのだろうに。

「…許すさ」

降谷くんも誰も許さなくても、俺が許すさ。
俺が降谷くんにどうこう言える立場ではない。当事者ではないのだから。
きっと降谷くんにだって、Aを許せない理由があるのだろう。俺が何かを言うのはお門違いだ。

「…の、前に、こいつに食わせないとな」

折角の休日のようだし、別にこいつを連れ回したって良いだろう。
すっかり痩せてしまったAをたらふく満腹にさせてやろうと思案していたら、何か嫌なものでも感じ取ったのか、それとも夢でも見てるのか、未だに眠っているAが『勘弁してください…』と心底嫌そうに呟いたので、思わず吹き出してしまった。

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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月23日 18時

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