60話 ページ24
・降谷視点
珍しく真剣な眼差しをした萩原から言われたその内容は、思わずその場の全員が固まってしまうものだった。
あの赤井でさえ、思わず目を丸くしてしまうほどだったのだ。
「……それ、は」
「…まだあいつには言ったりするなよ。」
「言えるかよ、そんなの」
その場がシン、と静まり返り、少し前までの賑やかさは何処へやらだ。
「…それも斎藤から?」
「ああ。その辺はまだ詳しく聞いてねえんだが、当日詳しく教えるとは言った。
……俺も驚いてるんだ。まさかこんな事になるとは」
それはそうだ。だって、もうあれは仕方のない事で終わったものだと思っていたのだ。
「ああ、だから萩原、『特に斎藤がAには来て欲しい』みたいなこと言ってたのか」
「あいつは本当に知らないのかと思ってカマかけてみたんだが、どうやら本当に知らないみたいだった。まあ連絡はお前ら公安には付かないだろうなってのは知ってたが」
「……これで何かきっかけになりゃ良いんだが」
きっかけになる。当たり前だ。これは、Aにとっても、俺たちにとってもきっかけになることかもしれない。
「………ずっと泣いてないAは、もう泣いても良いと思うんだよな」
「違う」
その言葉を遮るように、ほぼ無意識で否定の言葉が出た。
怪訝な目で俺を見るこいつらに、もう一度否定の言葉を口にする。
「泣いたんだ、A。やっと、泣いたんだ。」
あの日、ぐしゃぐしゃに顔を歪めて、10年振りに泣いたんだ。
縋りたい、止まりたい、泣きたい、消えたい。
そんな悲痛な本音とともに漸く泣いてくれたのだと言ったら、誰かが「そ、っか」と言った。
「泣いたのか、A」
「……やっと、泣けたんだ、な」
誰かの心底安堵した声を皮切りに、緑川の双眼からぼたぼたと涙が溢れていた。
「ちょ、緑川!?」
「え、あれ、何だろこれ。…なんかすげえ安心したら、涙出て来たわ」
そっか。と今度は嬉しそうに泣き出した緑川を宥めつつ、松田も萩原も、伊達も、赤井も笑っていた。その顔には「良かった」と書かれていて。
酔いは何処へやら。否、もう酔いなんて、皆どうでも良くなってしまった。
その後、戻って来たらしいAは、何らかの空気を感じ取ったのか「……どうしたの。っていうかなんで緑川泣いてるんだ!?」と目を丸くする。
何があったんだ、なんて言葉には誰も答えてなんかやらない。
今はそれで良い。これで進めるのなら、もう少しでお前に追いつけるのなら、それで。
918人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:遥 | 作成日時:2017年10月23日 18時