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・樹視点

途中まで機嫌が悪かった兄貴だったが、中也さんに連れて来られた食事処の料理を食べたら直ぐに機嫌は直ったようだった。
小さくなった兄貴。また兄貴は、俺達の知らないところで何かを巻き込まれていた。

普通であれば肉親が小さくなるなど、初対面の人間から云われても確かに誰も信じないだろう。思わず太宰さん達が何で簡単に信じるんだと聞いてくる位だ。
太宰さんの事はよく話に聞いていた。携帯で写真を見せて貰っていたし、武装探偵社の社員さんの様で、あの兄貴がそんな嘘を吐く訳もないので、其れは真実なのだろう。彼処の社員さんであるならば、十分信用に足る人だからだ。

兄貴が友人と云い、俺達の所にまで噂が轟く、灰色の厄介事を引き受ける、武装探偵社の方ならば。

だが、中也さんの事は俺は知らない。希も知らない様だった。太宰さんとは顔見知りの様だから、兄貴と友達なのも嘘では無いのだろう。……兄貴も、俺達に云えない事情が屹度あるのだ。

そう、兄貴はこの横浜に来てから、何かと隠し事が増えた様に感じた。俺の勘だけれど。

先程の男といい、兄貴は良く変な人間に好かれる人だった。
其れもこれもお人好しな所為でだ。その所為でよく厄介事に巻き込まれ、一時期は変な女にストーキングされるわ、ヤンデレ拗らせたみたいなラブレターは届くわで大騒ぎだった。

だから、若しかしたらこの姿も。
兄貴のその妙な不運が巡り巡っての事であるなら、ある意味何時も通りの事だが、小さくなった兄貴は、幼気な子供そのもので、何かと隠し事をする様になった、最近の兄貴とは違った。只の、小さな子供だった。

(なあ、兄貴。いつからアンタ、俺達にも云えない事、隠す様になっちゃったんだろうな)

アンタが何も云ってくれないから、俺がアンタに反抗期拗らせてるの、分かんないんだろうな。
子供の頃とは矢張り違って、歳も離れているから、兄貴ばかり大人になる。子供だから、頼って貰えないのだ。

俺はずっと覚えてるよ。アンタがずっと、怪我した俺を泣きそうな顔で見ていた事。

手を取り合っていたあの頃を懐かしく感じた。
横で美味しそうに頬張っている兄は、無邪気な子供で。嗚呼、こんな小さな頃からずっと、アンタは、貴方は俺を護ってくれていたんだなと。

「樹どうしたの?おいしくない?」

「…いいや、美味しいよ。凄く、美味しい」

声を掛けてきた兄貴にそう返す。
小さくなっていても、矢張り兄は兄なのだと、何処か安心した自分が居た。

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遥@携帯の調子悪くて返信遅れます(プロフ) - コメント一括にて失礼します。最近携帯の調子悪いので…皆様お待たせしました。次の話でとりあえずは彼の話は一旦終わりとなります。最後まで書き切りますので、それまで見てくださると嬉しいです。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
至恩(プロフ) - お久しぶりです!わーい更新だー!って通知見て思いました! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 77907255a2 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の死神(プロフ) - わわ…!更新待ってました!これからも頑張って下さい! (2019年10月13日 1時) (レス) id: eb1a5cc196 (このIDを非表示/違反報告)
- どストライクで大好きな作品です!応援してます!! (2019年9月27日 13時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
フェルト - すごく大好きです!頑張ってください! (2019年9月26日 18時) (レス) id: 00cb91440a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年2月15日 19時

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