ヨコハマのヤベー奴らと一般人くんの日常 弐【男主】

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まあ普通ではない、とは思いつつも、道に迷った貴婦人を放置するなど其れは当然俺が出来るはずも無く、何処に行きたいのかと聞けば、横浜ランドマークタワーに行きたいとの事だ。
交通機関からどう経由すればいいのか分からなかったとの事らしい。

「この後は空いていますし、どうせなら目的地まで案内しますよ」

「善いのですか？」

「俺も丁度息抜きしたい処でしたので。」

格好が医者みたいになっているから目立ってしまうかもしれないな、と思ったが、まあ、この人も貴族然とした風貌や服装なので、目立つのはお互い様だろうか。

「有難う御座います。助かりましたわ。お忍びだからと付き添いの者を連れて来なかったのが失敗でしたわね」

良家のお嬢様なのだろうか。
お忍び、だとかそういう云い回しが完全に貴族様とかお嬢様の其れである。

此処からだとランドマークタワーには桜木町駅の地下鉄から行った方が善いだろうか。歩いて数分もすれば着くだろうが、この人は大丈夫だろうか。電車とか、苦手だったりする可能性もあるし。

「失礼ながら、交通機関は地下鉄を利用する事になりますけど、大丈夫ですか？今の時間帯なら、退勤ラッシュとは重ならないので、地下鉄を利用する人間は少ないとは思いますけど、若し苦手だったら、と」

「ええ、構いませんわ。有難う御座います。其処まで心配をして下さるのね」

物腰は柔らかで、笑う姿は本当に綺麗だ。
俺の思い違いだったのかもしれないな──とは思いつつも、まあ、此処まで来てしまったのだから今更な話だ。

「そういえば、お名前を聞いていませんでした。俺は渡瀬Aです。差し支えなければ、貴女の名前も教えて下さると助かります」

日傘から少し見える顔は俺を見上げていた。
ぱちり、と瞬きをして、「そういえば、名乗っていませんでしたね」と目を伏せる。

「名乗り遅れて申し訳ありません。私はデイム・アガサ・クリスティと申します。
渡瀬さん、で良かったかしら。私の事は好きにお呼び下さいな」




少し後にはなるが、まあ俺の予想は当たっていたらしく、この人も普通の人ではないと発覚はする訳で。
其れもこの出逢いは、偶然でもなんでもなく、只面白がって興味が湧いたこの人から寧ろ接触しに来たというのは、後から知る事になった。





「………彼女、何処に行ったんです？」

「ドストエフスキー様が話されていた、件の青年の顔を見に行くと云っておられましたよ」

「…………………は？」

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