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・中也視点
部屋に上がれば中途半端に開いた扉を覗き込む。覗き込めば布団でスヤスヤと眠る芥川と、渡瀬の膝に頭を乗せてまるで猫の様に眠りこける太宰が居た。
そしてそんな渡瀬は、太宰が居るから動けないのか、足が痺れているようで身体を小さく震わせている。
「……邪魔してンぞ。何だ此れ、どう云う状況だよ」
「あっ、中也君いらっしゃい。中也君助けて〜〜太宰寝ちゃったんだけど、下手に動いたら起こしちゃうし、足痺れるしでしんどいよ〜〜」
太宰の頭をぺいっと床に落として渡瀬を救出する。割と乱暴にしたのに、安堵しているからなのか、少し厭そうな顔をしてムニャムニャと云って居たが、直ぐにまた眠りに落ちた。
ブルブルと震えている渡瀬は、俺の両手を掴んでまるでスケートリンク初心者の如くの屁っ放り腰で必死に立とうとしている。
「おぬぬぬぬ、中也君飯食った?」
「何だその声。否、未だ食ってねえよ」
「そうだろうと思っててさ〜。夕飯の残りあるから食う?」
「食う」
正体を知ったはずなのに、本当に何も変わりない態度だった。
聞きたい事なんて山程あるだろうに、何も踏み込まなければ聞いても来ない。太宰の本性を知っても尚、突き飛ばしもしなければ、拒絶の言葉一つ吐かずに未だ家に上げてくれる御人好しなのだ。
リビングに移動して、冷蔵庫から取り出した夕飯の残りをレンジに入れようとした渡瀬の腕を掴む。
嗚呼、脈が速い。
此奴、矢ッ張り驚いてはいるのだ。そりゃあそうだ。幾ら聡いとは云っても、マフィアだと知って、太宰のマフィアでの顔を見て、その相手を家に上げるのなんて、本当に相当勇気のいる事だ。
「怖ェか」
「怖くても俺は何でも善いんだよ。」
「何故だ」
「嫌わないでってあんな顔で云われちゃ、もうどうしようもなかった」
苦笑を漏らした渡瀬に、俺も苦笑を漏らす。
あの青鯖、本当に厭だったンろうな。此奴に嫌われる事だけが、本当に。
電話の事も思い出して納得する。
「有難う」
「え、」
「美味い飯は善い。」
───例えこの身体が、元々そういう風に造られたものでは無かったものであっても。
『中原中也』は人間として生きている。なら、美味い飯は善いものだ。食べるのだから。この身体に取り込んで、血肉を形成する物だから。
そう云えば、「こちらこそありがとう」と、Aはニッカリと笑うのだ。
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時