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眠ったままの矢鱈とこの細くて病弱な子(名前が分からない)は家に着いたら即座に俺の布団を敷いて寝かせた。
……本当に細い子だ。血色も悪い。太宰君が何をしていたか、なんて本当は凄く気になるが、深入りし過ぎは良くない。
「本当に何も聞かないんだね」
「まあそりゃ俺だって空気は読むし、深入りし過ぎは良くないって分かるよ。俺が口を出せる立場じゃないし、お節介で俺の家に連れては来たけど、本当は俺関係ないと云えば関係無いしね」
「……けど君は逃げる事もせずに、寧ろ家に上げるんだもんね」
「太宰君の顔見たら無視できないよ」
何と無くだけれど、泣きそうな顔をしていた太宰君を放って置けなかったのも理由の一つだ。別にこの子だけでは無い。
そう云えば、ふにゃふにゃと、普段の太宰君からは想像もつかない程弱々しい顔になった。苦虫を潰したような、何かを堪えるような、そんな顔。
「俺と変わらないだろうに、幹部か」
「……」
「そっか。だから太宰君、時々年相応らしくもない顔をしていたんだ」
「……、ッ、」
「俺はただの一般人だし、マフィアの事とか、裏社会の事なんて、何にも分からないし、知らないけど」
幾分かぼさついた太宰君の頭に手を置く。過剰な程にびくりと跳ねたその身体に、何故か痛々しいと思った。
「………いつもマフィアで、こんな顔してるの」
「…多分ね」
「太宰君、」
「うん、」
「ご飯食べようか」
「……っ、うん…!」
頭に手を置いた俺の腕を握り締めて、まるで縋るようにされた。
大人びていると思っていた。けれども、こうしている姿は本当に子供の様で、その痛々しい姿に胸が苦しくなった。
けれども彼は、俺の家に来て、少なくともご飯を食べている時はちゃんと笑っていたのだ。無理をしている笑い方でも、愛想笑いでも無い。純粋に美味しいと、その時だけはちゃんと太宰君は笑ってくれるのだ。
どれが本当の太宰君なのだろう。
其れは今の俺には分からないけれど。
マフィアでも何でも良かった。
出逢ってしまったのなら、もう最後まで共犯で居ようと今決めた。
「何が食べたい?」
「……君が作るのなら何でも」
「それが一番困るなぁ」
「しょうがないでしょう。だって、本当なんだもの。」
「……そう云うのは女の子に云ってやりなよ」
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時