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・太宰視点
きっと怖がられる。逃げられる。
そう思っていたのに、マフィアだと私がはっきり云ったにも関わらず、「んじゃ、太宰君。今からこの子も連れて俺の家行くよ」などと彼は宣った。
「………は?」
全く予想もしていなかった答えに、私はらしくもなく間抜けな声が漏れた。
気絶してしまったらしい芥川君を普通に背負おうとする渡瀬君の肩を掴む。
「君、聞いてたんだよね?」
「うん」
「私がマフィアだっていうの、知ったのに」
如何して逃げないの。
カタ、と自分でもわかるくらい掴んだ手が震えていた。きっとそれは渡瀬くんにも伝わっている筈なのに。
私は今、どんな顔をしているのだろう。
「この子置いて逃げる訳にも行かないし、此処で話すのもなんだから、俺の家行こうって訳だよ」
「……マフィアだと知っても家に上げるのかい」
「そりゃマフィアは怖いし、聞きたい事も云いたい事もあるけど、場所が場所。」
「………」
「其れに、殺すのなら俺が現れた時点で殺したでしょ」
「……、…」
「俺はそれが答えだと思ってるよ」
その通りだった。もう其れが答えだったんだ。
怖くて仕方なかった癖に、何処までもちゃんと人を見てくれている彼に、狡いなぁと思った。
また芥川君を背負おうとする渡瀬君をまた制する。
「………その子は私が運ぶよ」
そう云えば、渡瀬君は大人しく引き下がる。
自分が拾ってきた部下だ。渡瀬君が何れだけお人好しであっても、自分がやったのだから自分で始末は付ける。
彼の家に向かっている間、暫く私達は無言だった。割と住民街に近い場所だったのが失敗だった。そうすれば未だバレなかったかもしれない、と頭の中で考えていたら、渡瀬君の方から名前を呼ばれた。
「ご飯食べた?」
「…否、食べてないよ」
「なら食おっか。俺はもう踏み込まないけれど、太宰君は云いたい事あるだろ。」
「………」
「云いたい事言い終わったら、一緒に食べよう。」
……上手い事、踏み込んで欲しくないことに対して察して、線引きしてくれている彼は其処から何も云わなかった。
何も聞かない。けれど私の云いたい事は聞いてくれるのだと。込み上げてくるものを感じて、唇をきつく噛み締めた。
「お兄ちゃん」
「随分と図体のデカい弟だなぁ」
嗚呼、可笑しそうに笑ってくれる顔に、何れだけ私が嬉しいか、知らないんだろうな。
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時