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あれから時折中也君は顔を見せに来るようになった。太宰君も来てはくれるのだが、何だか様子がおかしくて、「大丈夫か?」と聞いても何でもないとはぐらかされる。
態度は確かに普段通りではあるけれど、時折、一瞬だけ見せる寂しげな瞳が何故だか気になって、聞いてみても此れなのだ。
「うーーーーーん、太宰君最近なんかおかしいけど何か知ってる?中也君」
「太宰の心配しつつ俺の服のほつれた部分を直してくれる辺りお母さんだよな〜〜〜〜渡瀬」
「だーれがお母さんじゃい せめてお父さんと呼べ」
中也君のジャケットのほつれた部分をちくちく縫いながら中也君に聞くが、中也君も中也君で「まあ思春期だよ。彼奴真面な友達居ねえから。居ても数人だ」と本人が居ないところでディスっている。
「彼奴も色々戸惑ってんだ。つっても俺も本人から聞いた訳じゃねえけどよ、まあ腐っても一緒にいる仲だ。何となく何考えてるのかは分かる」
「中也君と太宰君実は仲良いでしょ」
「もう一遍云ってみろ」
威圧感のある笑顔でニッコリと云われて仕舞えば平謝りするしかない。
縫い終わって鋏で糸を切り、特に不備がない事を確認してから中也君にジャケットを返す。
「……太宰の周りの環境が、年上ばっかりでよ。同年代と云ったら俺とか他に居てもほんの少しだ。そしてその同年代と関わりがあるかと云われればそうでもないしな」
「ふうん」
「まあ、だから戸惑ってるんだ。渡瀬との距離感にな」
目を丸くする。太宰君の悩みの種は暗に俺だと云われている様だ。
「同年代との関わりなんて主に俺とあと数人。俺と太宰はお世辞にも仲は良くねえし、…他の奴らも。
だが手前は太宰からしたら初めて出逢うタイプだったんだろうぜ。だから接し方や距離感に戸惑ってる」
……殺伐とした環境に彼はいたんだなと思うと同時に、まあ、納得もした。彼の年相応らしくない雰囲気にもだ。
深くは聞かないし聞く気もないが、まあ、周りの環境的に俺の様なタイプの人間が居なかったから戸惑っている、というのが中也君の見解らしい。
「まあそれ以外にも悩んでることはあるみたいだが…其れは俺にも分からねえ。」
「うーん…まあ太宰君が話してくれる気になったら聞くかな」
其れにしてもまあ、中也君の見解が正しいのなら、あの聡明そうな太宰君にも戸惑う事はあるんだなと思った。
嗚呼、そう云えば太宰君って、あのもこふわ帽子の、弁当あげた人に何となく雰囲気似てるなぁ。
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時