08.今日もまたこの国に朝が来る ページ10
カタカタと手元のパソコンを操作していたら、もう結構な時間が過ぎていた。
もうすぐ夜明け。空が白み始め、一度作業を辞めてしまうと、一気に疲労感や、肩が凝っているのが分かってしまって、とりあえず一度小休憩に入る事にした。
あれから降谷から連絡は入らない。
独自に動いているようだし、必要があれば呼び出すとも言っていたから、私が出る幕では無いのだろう。
数時間前に飲んだエナジードリンクはどうやら効き目がよくなかったらしく、二度とこのメーカーのは飲まないと心に決め、とりあえずコーヒーを淹れることにした。
……ポアロの残り香のコーヒーの匂いには程遠くて、あの時、一杯だけ飲みたいなんて言ったら、降谷は淹れてくれたのだろうか、なんて今更考えてしまう。
自分で淹れたものだから、自分の好みの味ではあるが、それでもきっと、降谷があの店で淹れたものの方が、何倍も美味いのだろうなと思う。
(まあ公安じゃズボラだし、むしろここだとお茶やコーヒーを淹れてもらう側だし、それにエナジードリンク飲む方が多いしな)
降谷のコーヒーは飲む機会がなさそうだ、と少し残念に思った。
コーヒーがちょうど出来上がった後、白み始めた空に、一筋の光が差し込む。
(……朝日)
徹夜明けの目には少々光が強く、目を細める。
それでも綺麗な空だった。夜明けだ。この国の、夜明け。朝だよ、とこの光で次々と人々は起きてくるのだろう。
(あれだけの事件が起きたのに、当たり前だけれど、普通に日は昇るし、当たり前のように、1日が始まるんだな)
何処か他人事のように、ぼんやりとそんなことを思った。
今頃降谷は何をしているのだろう。
きっと徹夜してるんだろうし、彼もこの朝日を何処かで見ているのだろうか。
ぼんやりと朝日を眺めていたものだから、若干温くなって、あまり美味しくなくなったコーヒーを流し込むように飲む。
やっぱり一度くらいは、降谷のコーヒーが飲んでみたいなと素直に思った。
同時刻。公衆電話ボックスの中から、東都に差し込む朝日を、降谷も眺めていた。
きらきらと、その綺麗な髪に光が当たり、まるで、輝いているかのようだった。
降谷そのものが、まるで朝日かのように。
859人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茶 - 遥さんの作品本当に大好きです!続き楽しみにしています! (2018年7月12日 17時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます。原作沿いは話は実を言うとあるんですが、シリーズに区切りのいいところで今現在連載してる続編で完結させようかなと思ってます。 (2018年4月28日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 読ませてもらってます!これを見て、原作沿いでやっても面白いんではないか、と思っているこの頃です。 (2018年4月26日 23時) (レス) id: d835bf4d9c (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ワカメさん» →なと思ってます( ˘ω˘ ) 日本を守ることしか多分今のところは頭に無いから、本当の恋人とか作る予定は当面なさそうな人だな〜とは思ってますwそんなところも素敵な降谷さん…… ありがとうございます!頑張ります〜! (2018年4月23日 16時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ワカメさん» コメントありがとうございます!降谷さんにとっては国というものは多分何よりも守るべきものであり、恋人のように愛おしい存在で、「僕の日本から出て行け」みたいな台詞も合わさって考えると、『自分の』守るべきものって感じがひしひしと伝わってくるからカッコいい→ (2018年4月23日 16時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:遥 | 作成日時:2018年4月21日 21時