07.知らない君の顔 ページ9
眩しいくらいの夕暮れだった。
夕方から夜に代わる時間帯。
刺すような光の夕暮れに目を細めながら、目的地である降谷の潜入先、または隠れ蓑である喫茶ポアロへとやって来た。
上を向けば、窓に「毛利探偵事務所」と書かれたその場所は、先ほどまで公安がいた場所。
……居たたまれなくなるのは、仕方がない。私だって人間だ。
カランカラン、と音を立てながらポアロの中へと足を踏み入れる。
年季が少し入ったような店内は、何処か落ち着くものだった。コーヒーの残り香がして、思わずすん、と嗅いでしまう。
……きっと、ここのコーヒーは美味しいんだろう。こんな用事でなかったら、普通に飲みに来たいとは思う程度には。
カウンターの奥から、人影が現れる。
待っていたと言わんばかりに現れたのは降谷──否、今は、安室透と言ったほうがいいか。
「……すみません、まだお店は空いていますか」
「申し訳ありません。生憎店仕舞いでして…扉の方に閉店のプレートを掛けていなかったこちらの不手際です。
……しかし折角来て頂いたのですから、何かお出ししましょう。お座りください」
にこりと、降谷の時では到底浮かべないような笑顔に、正直寒気がした。安室透は、こんな風に笑うのか。
私がカウンターに座ったのを見て、安室さんは扉の方へと向かい、閉店のプレートを下げて来たようだ。
エプロンの結び目をしゅるりと解き、脱いだところで、いつもの降谷零の顔に戻った。
「進捗は?」
「これといってめぼしいことは何も。知っての通り、公安は毛利小五郎を逮捕した。…後のことは君に任せる。」
「ああ。お前もお前で、犯人や動機については探っておいてほしい。必要な時はまた呼び出すが」
「……降谷はこの後何をするの?」
「現場のガス栓にアクセスした通信を調べている途中でな。
さすが最先端とあって、何やら変わったシステムが使われているようだぞ」
「……何でもかんでも最新式にしたのが裏目に出た結果だな」
それももう後の祭りだ。
サミット会場は変更される事になるそうだし、ただ単に莫大な金が浪費されただけの国際会議場。
関係ないところで何故か頭が痛くなるのを感じた。
「判明次第、警視庁の公安部には伝えておきなよ」
「言われなくてもそうする。…お前こそ無茶はするなよ」
「降谷には言われたくない」
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茶 - 遥さんの作品本当に大好きです!続き楽しみにしています! (2018年7月12日 17時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます。原作沿いは話は実を言うとあるんですが、シリーズに区切りのいいところで今現在連載してる続編で完結させようかなと思ってます。 (2018年4月28日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 読ませてもらってます!これを見て、原作沿いでやっても面白いんではないか、と思っているこの頃です。 (2018年4月26日 23時) (レス) id: d835bf4d9c (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ワカメさん» →なと思ってます( ˘ω˘ ) 日本を守ることしか多分今のところは頭に無いから、本当の恋人とか作る予定は当面なさそうな人だな〜とは思ってますwそんなところも素敵な降谷さん…… ありがとうございます!頑張ります〜! (2018年4月23日 16時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - ワカメさん» コメントありがとうございます!降谷さんにとっては国というものは多分何よりも守るべきものであり、恋人のように愛おしい存在で、「僕の日本から出て行け」みたいな台詞も合わさって考えると、『自分の』守るべきものって感じがひしひしと伝わってくるからカッコいい→ (2018年4月23日 16時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年4月21日 21時