キスしてみた【T】 ページ4
「ただいま帰りましたー！」
「おかえりー。久々のジムはどうだった？」
「いやぁ、やっぱりいいもんですね〜。筋肉が喜んでますよ！」
嬉しそうに報告するとらちゃんが可愛くて私も笑って良かったねと嬉しくなる。そんなとらちゃんにご飯作るから待っててねと言った。
とらちゃんは「分かりました！」と元気よく笑って自室へ行く。犬だなぁなんて思いながら晩ご飯を作る。
しばらくして。不意に視線を感じて振り向くととらちゃんがこちらを覗き込んでいた。
「どうしたの？」
「いや……何か手伝える事あるかなーと」
「うーん……じゃあ揚げ物やってもらいたいなぁ」
「任せてください！」
とらちゃんは嬉しそうにこちらへ来て手伝ってくれる。多分ひとりで作業しているのがつまらなくてこっちに来たんだろう。
やっぱり犬だなぁと思いながらサラダを作る。今日はジムに行ったとらちゃんのためにヘルシーなものを中心にした。
「あーやっぱりAさんの料理は最高です！」
「ふふっ、ありがとう。デザートに牛乳プリンあるからね」
「やったー！」
どんなことも嬉しそうにするとらちゃんが可愛くてずっとにこにこしていられる。
終始笑いながらご飯とデザートを食べ終えた後、とらちゃんは作業へと戻る。
基本裏方の仕事が多い彼は色んなイベントや企画を練ることで大変そうにしている。
だけどそれが彼のやりたいことなら私に止める権利はない。彼が本当に困って助けてとサインを出した時に寄り添って支える。
それまで私は傍で見守るのが仕事だ。
そんなことを思いながらコーヒーを淹れて部屋へ運ぶ。
「とらちゃん、お疲れ様」
「……あぁ、すみません。ありがとうございます」
「多分もうしばらくかかりそうなんで、先に寝ててもいいですよ」
疲れた顔で笑う彼に、私は少し心配になる。ここ最近ずっと頑張ってばっかりだ。少しくらいは休んでいい気もするが。
私は首を振って彼に口付けをした。
「待ってるよ。お腹空いたら言って？軽い物ならすぐ作るよ」
「……珍しい、ですね……Aさんからするなんて……」
「ふふっ、最近頑張ってるからね」
とらちゃんは頬を赤くして「よしっ」と言うとパソコンに向き直った。その様子に私は頬を緩めて静かに部屋の扉を閉じた。
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作者名：やなぎゆき | 作成日時：2019年10月4日 0時
