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はぁ、終わらない……
時刻は午後22時。おついちさんと約束した時間はとっくに過ぎているが、みんなが帰ってしまっている中私は1人黙々とデスクに向かっていた。
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なぜこんなことになっているのかというと、後輩である女子社員が明日提出の書類で重大なミスをしてしまっていたから。
定時ギリギリに出された書類にはいくつも不備があり、指摘しようとした時には彼女は既に会社にはいなかった。
兄者に媚を売っている暇があるのならもっと早く提出してほしかった。
…なんて今更言っても遅いのだが。何を言ってもこの書類は明日までに必ず終わらせなければならないのだ。
後輩のミスは自分の責任でもあるし、と自分に言い聞かせ、おついちさんに泣く泣くキャンセルの連絡を入れた。兄者には直接謝っておこうと思ったが彼も定時で上がっていたので姿はなかった。
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…そして今に至る。
今頃3人は楽しくご飯食べてるんだろうなあ。部署が違うから頻繁に会えるわけではない弟者くんとお話したかったな…
おついちさんは、終わったらいつでもおいでよ、と返信をくれていたがまだ終わりそうにない。
ため息を1つつくと私はまたキーボードをたたきだした。
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(ピトッ)
「?!?!」
それからまたしばらく書類のミスを直していると、突然頬に冷たいものが当てられ、驚きと冷たさで声にならない悲鳴をあげてしまった。
頬に当てられたそれは私の好きなアイスカフェオレ。しかも1番好きなメーカーやつ。
…振り向くとそこには兄者が立っていた。
兄「よ、元気?」
「元気に見える…?というかなんでここに?」
兄「手伝いに来た。今日車で来てたから酒飲んでねえし。全然連絡寄越さねえし。」
慌ててスマホを見ると、兄者からのメッセージがたくさん来ていた。おついちさんと弟者くんからもちらほら。
「あ、全然見てなかった…ごめん」
兄「いやいい。んで、なんか俺にできることあんの?あとこれやるよ」
カフェオレを手渡しながら、いつもの意地悪な顔ではなく優しい顔で聞いてくる。
「…ありがとう。これ、赤で訂正してるところを打ち直してほしい。」
兄「ん、わかった」
いつもなら絶対に手伝いなんて要らないと言うが、精神的にやられていたし、今日だけは兄者の珍しい優しさに甘えさせてもらおう。
大好きなカフェオレと優秀な兄者のおかげで、その後はなんとか30分程で書類を完成させることができた。
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作者名:shirö | 作成日時:2018年7月9日 23時