red × red *弟者 ページ30
※童話パロ?(設定のみ)
若き王が治める王国にある小さな街。私はそこで暮らしている。
そして、私のおばあちゃんは街から少し離れた森の中に住んでいる。そこは王国の隅にあって、とても綺麗な森だった。
私はおばあちゃんっ子で、昔はよく森に行っていた。しかし最近は余り顔を出せていない上に、今はおばあちゃんの体調が優れないらしい。
心配になった私は久しぶりにおばあちゃんに会いに行くことにした。
裁縫が得意なおばあちゃんお手製の赤い頭巾を被って。
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薄暗い森を進んでいくと、綺麗なお花畑が見えてくる。その辺だけ気が生えておらず光が差し込んでいるため、とても明るく見えた。
「わぁ、相変わらず綺麗だなぁ」
私はこのお花畑が大好きで、せっかくだからお花を楽しもうと思ったその時、ふと視線を感じて振り返った。
そこには懐かしい姿が。
「まあ、弟者!久しぶりね、元気だった?」
大きな体にピンと立った耳、ふさふさしっぽに真っ赤な瞳。木の陰からこちらを見つめていた彼は、私が声をかけると嬉しそうに擦り寄ってきた。
彼はオオカミ。と言っても最近街で噂されているような凶暴なオオカミではなく、本当に心優しいオオカミで、私が生まれる前からおばあちゃんのお手伝いをしてくれているのだった。
おばあちゃんの家に飾るお花を摘んでくるのも弟者の仕事で、今もその最中だったらしい。
「お花摘んで、一緒に行こっか」
私がそう言うと、弟者はブンブンとしっぽを大きく振って器用に花を摘み取ると、首からかけていたおばあちゃんお手製の赤いポシェットに入れる。
そして弟者は更に赤い花を摘み取って、私に差し出した。
「…私にくれるの?」
そう聞くとまたブンブンと揺れるしっぽ。
「ふふ、ありがとう!じゃあ行きましょ」
綺麗な赤い花を受け取ると、私たちはおばあちゃんの家に向かって歩き出した。
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「おばあちゃん、久しぶり!」
祖母「まあAちゃん、来てくれたのかい?弟者もお花摘みご苦労さま」
家に着くとおばあちゃんはベッドから笑顔で出迎えてくれた。弟者は花瓶に花を生け、ベッド脇に座った私に寄り添った。
祖母「弟者は相変わらずAちゃんが大好きなのねぇ」
私はその言葉に思わず顔を赤くしてしまった。
弟者のことが大好きなのは私の方だから。しかも恋愛的な意味で。
オオカミだとか人間だとかそんなこと私には関係なかった。弟者の優しい心に惹かれてしまったのだ。
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作者名:shirö | 作成日時:2018年7月9日 23時