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「はぁ、やっっっと終わったぁ…」
兄「ん、お疲れさん。家まで送ってってやるよ」
「いいよ。まだ終電まで時間あるし」

また意地を張ってしまう。本音を言えば疲れてるし送ってもらえるのはありがたい。でも兄者に甘えてばかりなのは嫌なのだ。

兄「ダーメ。送ってく。手伝ってやったんだから黙って俺の言うこと聞けバカ」
「なっ、バカってなによバカって!」
兄「お前はバカだよほんと。バーカ。いつになったら気づくんだよ…」

最後の方は声が小さくて聞き取れなかったが、聞き返しても兄者は答えてくれず、私はそのまま駐車場まで連れて行かれた。

兄「懐かしいな、お前を家まで送ってくの」

兄者は運転をしながらそんなことを言い出す。確かに、昔はよく送ってもらっていた。気分によって車と電車を使い分けていた兄者だったが、私とご飯に行くと分かっている日は必ず車で来て、自分はノンアルコールビールを飲んで私を送ってくれていた。

「懐かしいね。あの頃は仲良かったのに、私いつからこんな風になっちゃったんだろ」

いつからこんなに意地を張って…ずっとずっと、兄者のことが好きだったのに。

兄「へ?」

突然兄者がびっくりしたような声を漏らす。

「なに?」
兄「いや、今お前、俺のこと好きだって…」

え、ウソ。もしかして口に出してた…?

「あっ、いや、その、それは…」
兄「…俺、嫌われてると思ってた。仲良かったのに知らないうちに心の距離がどんどんできてて。気づいたら俺は、嫌がるお前をからかうことでしか接することができなくなってた。」
「嫌いになんて…なるわけない。私がただ優秀な兄者と自分を比べて嫌な女になってただけ。」
兄「…俺はこんなイイ女、他に知らねえけど。ホラ、着いたぜ。」

なんで。私は仲の良かった、大好きな兄者を突き放してたのに。そんなこと…

兄「お前も俺のこと好きなら…もう我慢しなくていいんだよな?」

車を降りた私にウィンドウを開けた兄者はそう言って、私の顔を引き寄せ優しくキスをすると照れ臭そうに笑って去っていった。


私の好きな人は、冷たくてほろ苦くて…でも甘い。


-----

あとがき

3作目は仕事のできる兄者さんと素直になれない同期のお話。

描写はありませんでしたが、おついちさんと弟者くんは2人の気持ちに気づいてて、特におついちさんはずっと傍で応援してくれています。そんな仲間に恵まれるって素敵ですよね。

それではまた次のお話で。

至福の時間 *ぺちゃんこ→←--



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作者名:shirö | 作成日時:2018年7月9日 23時

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