第3話 利用価値 ページ4
「おっつんのお陰で面倒事が増えちまった、ありがてぇ事だなぁ」
椅子にふんぞり返りながら、机に足を投げ出す。
その表情も言葉も皮肉めいていた。
「私はその面倒事を最小限におさめたつもりなんだけどね」
そんな皮肉に動じることもなくティーカップに入れられた紅茶をマイペースに啜る。
その様子が不服だったのか獣が威嚇するように目を細め小さく唸る。
「兄者もそこまでにしようぜ、おついちさんもおついちさんなりに考えてやったことなんだろうからさ...」
そんな二人の様子にまぁまぁと割って入る人影。
無精髭を蓄え、獣のような赤毛を不躾に後ろへと撫でつけている男。
その男の様子にひりついていた空気が僅かに緩む。
「ンなことぐらい分かってら」
鼻を鳴らしそっぽ向く兄貴分に小さく笑いをこぼす。
「それで...結局あの子はどうすんのさ」
率直に疑問に思ったことをおついちさんのほうに顔を向けながら問いかける。
当の本人は紅茶を飲みきってしまったのかコトリとテーブルにカップをおく。
「勿論、ただ闇雲にあの薬を使ったわけじゃないさ。あの子には存分に働いてもらうよ。あの薬分相応の利用価値としてね。」
ニコリと微笑みを浮かべながらサラッと言い放つ。
偶然だったのか必然だったのか、どちらにせよ運悪くあの場に居合わせたあの青年に哀れみの念が浮かぶ。
「まさか、兄者君あのまま利用せずに自由に放してやる、何て言わないだろう?」
「……勝手にしろ」
納得したのかしていないのか、口元を歪ませるおついちに目をそらす様に立ち上がり、背を向けては部屋を後にする。
「相変わらず兄者君は甘いねぇ」
「...兄者は優しいからしょうがないさ」
出ていく背中を見送ってはボソリと呟く。
恐らくあの青年の部屋に向かっているんだろうことは知っていても口に出さぬまま。
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作者名:厄病屋 | 作成日時:2017年9月20日 1時