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猛毒*64* ページ22

__Law__



人の気配を辿りながら走っていると急に視界が開けた。
どうやら街に着いたらしい。


ガスマスクを外し、少し苦しかった呼吸を整える。


「はぁ…」


帽子も一度被り直してから改めて周りを見渡せば
もぬけの殻になっている小規模な商店街が目に入った。

とにかく誰でもいい。島の住人に話を聞かなければならない。

だがここまで来ても未だ敵が隠れている可能性も捨てきれない。
不意を突かれないよう細心の注意を払いながら俺は走った。








暫く街の中を彷徨い、目に付いた大きな建物の方へ向かっている道中漸く一人目の住人を見つけることが出来た。

と言っても




「…お兄ちゃん、誰?」

「子供か…」




まだ年端も行かないような、女の餓鬼。




しかしここまで走ってやっと会えた住人でもある為
なるべく視線を合わせ話しかけた。




「この島の大人達はどこに居る?」

「………お兄ちゃん、海軍?」




そう言われ何かがキレかけたが、どうにか抑えた。
海軍共と一緒にされんのは、やっぱり気持ちのいいもんじゃねェ。
例えあの人と同じでも。


いや、今はそんなことを考えている場合では無いと思考を振り切り
そのまま女の餓鬼と話を続けた。


話を聞くにどうやら島の大人達は、消えない霧と海賊の脅威に怯えきってしまい
全員家に引き篭っているらしい。



「お前は何故出て来たんだ」
「…お外で、大きな音が聞こえたから。もしかしたら、助けが来たのかもしれないと思って…」

「それで一人で様子を見に出たのか」



餓鬼はゆっくり頷いた。

大人は頼りにならず、助けが来たかもと思えば、また海賊。
餓鬼のことなんか、正直心底どうでもいい。が。


「……」


目の前にいる小さな餓鬼は、深い青色の大きな目を涙で濡らし、こちらをじっと見上げていた。
その目を見ているとAを思い出して仕方が無い。

故に強くは言えず、こうして今も目線を合わせるために膝を着いてしまう。

自分が単純すぎて呆れているところだ。



「…良いか、俺たちは海賊だ」
「…」

「ここに居る海賊は俺の大切なものを傷付けた。だから仕返しに来た」

「それって、あの人達をたおすってこと……?」


その目を見つめ頷けば、不安げに揺れていた瞳は一瞬で光を浴びたように輝き始めた。


「みんなに教えてあげなきゃ…!」


たたっと走り出した餓鬼の後を追う。
アイツに着いていけば引き篭っている大人達にも会えるだろう。

…後少しだ。

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凛月のさぶ。(プロフ) - Nakoさん» 返信遅れてすみません!コメントありがとうございます!良かったです!ぜひ楽しんでください😊 (7月1日 14時) (レス) id: e8fb34f3b7 (このIDを非表示/違反報告)
Nako(プロフ) - すみません。見られました! (7月1日 14時) (レス) id: ce50961c41 (このIDを非表示/違反報告)
Nako(プロフ) - 中編集がみらません。年齢制限の変更はどうやりますか?楽しくて何回も読んでいます😊 (7月1日 13時) (レス) id: ce50961c41 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - aimerさん» レスを付け忘れていました…。また不明点などありましたらお気軽にお声がけ下さい! (5月27日 23時) (レス) id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - コメントありがとうございます!中編集の方はアプリでは閲覧できませんので、ウェブから占ツクのサイトへアクセスして頂いて、それでも見つからない場合は設定から年齢制限の変更が必要になります。探して頂いてありがとうございます…中編集でお待ちしております。😊 (5月27日 23時) (レス) id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凛月 | 作成日時:2023年2月15日 1時

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