【HQ】恋色ソーダーwinterー【短編集】

14 国見英 『また最初から』 ページ41

・

クリスマス。と言えば、七面鳥の丸焼きを中心に料理好きな母親がたくさん作った料理を食べて過ごすのが当たり前だった。今年も(さすがにプレゼントはないが)母親が食べきれないほどの料理を作ろうと朝から仕込みをし始めている。去年よりも仕込みに気合の入っているような気がする母親は手が離せないらしく、私に予約していた七面鳥の丸焼きをデパートまで取りに行けと言うあまり気の乗らないお使いに中々腰が上がらないが、お釣りは好きに使っていいと紙幣を頂いたところでコートを着込んで外へ出た。

会話に花を咲かせて手を繋ぐカップルとすれ違うたびに携帯の通知を確認してしまうのは、今年が初めてだ。今まで家族と過ごすのが当たり前で、友達とも一緒に過ごさなかった私が、今年はもしかしたら違うんじゃないかと思っていたからだ。高校生になって、初めて彼氏ができれば誰だってそう思うのではないだろうか。

けれども、彼は今日部活で特に遊びに行く予定等も入っていない。むしろ、冷静になって考えてみれば休日にデートへ行った覚えがない。部活が忙しいのは分かっていた。それを分かった上で告白はした。でも、ここまでほったらかしだとは思わなかった。

周りを見てみてもカップルにカップル。友達とプレゼントを用意してみてはいいけれど、当日は休日で彼は部活だし、前日にも渡す機会は訪れなかった。元々、約束もしていないのにプレゼントを買うのが間違いだったのかもしれない。もう冬休みに入ってしまったせいで年明けに渡すことになりそうなプレゼントは、今も勉強机の上で大人しく鎮座している。

中学から一緒で、クラスメイトではあったものの、特別仲が良いってわけでもなかった。二者面談の順番が私の次だった英くんを呼びに行くのに体育館に行った時、バレーをしている英くんがカッコよく見えた。私が恋に落ちたのは、この時だ。

恋はするものではなく、落ちるものだ。よく言われる言葉の意味がよく理解できなかったけど、この時分かった。心臓が本当に落ちるような感覚に見舞われ、少しだけ足元が竦んだ。ドクン、ドクン、と大きく脈打つ。これが恋なんだって思った。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す