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ただ勧誘とは知らず私がうんざりした感じで言ってしまったから、黒尾はそれを気遣ってくれているのだろう。私が口を開くより先に、彼はパンッと両手を合わせた。
突然の大きな音に驚いて目を見開く。その先では黒尾が頭を下げていて
「頼む!見学に来てくれるだけでいいんだよ……!何も何時間も居ることないし、飽きたらすぐ帰っていいから!」
「えっ、見学だけでいいの?」
そんなふうに懇願するから、つい聞き直すと彼は顔を上げ肩を竦めた。
「そりゃ本音は入ってほしいけどさ、無理は言いたくないし。……うちの部マネージャー居なくてさ、誰か一人でも連れてかねーと部活やらせて貰えないのよ」
「あーなるほど」
てっきりモテ期が到来したのかと思っていたが、他のみんなも先輩に言われて仕方なくやっていたのかもしれない。自分が自意識過剰だったことを自覚して恥ずかしくなりながらも、それを誤魔化そうとすぐに口を開く。
「いいよ、見学行く」
「……っ?!マジ!?え、いいの!?」
「うん。特に予定ないし、体操服とかないけどいいなら」
「全然いい!ふっつーに見てるだけでいいのよ!!あーホントに、マジでありがとう!」
私の手を取り嬉しそうにブンブンと振り回す。かと思えばガッツポーズして「ッシャア!!」と叫ぶし。
見学するだけなのに大袈裟だ。それでもそんなに喜んでもらえて嬉しくないわけが無い。にこにこと眺めていると今度は「っじゃあすぐ行こう!あ、その前に夜久達に報告だな」とスマホを構い始める。
「そういや、今更だけどさ」
「うん?」
「名前、なんてーの?」
「そういや言ってないっけか。朝井 Aだよ。私からもひとつ聞いていい?」
「朝井さんね。もちろん、何でも聞いてくれていいぜ」
「黒尾って何部?」
「え」
勢いで見学行くとか言ったけど、そもそも彼が何部でこれからどこに連れていかれようとしているのか、全く把握していなかったことに今更気づいた。
黒尾も自分が言っていなかったことに気づいて「あーそっか、言ってねえな」と半笑いした。
「バレー部だよ。昔はそこそこ強かったんだぜ?」
「バレー?」
ただ彼が何部でも見学くらいするつもりだったが、バレーという言葉にピクリと反応してしまう。
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きゃーぽん(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュンするし、すーっごく面白いです!更新頑張ってください!^_^ (2022年6月5日 0時) (レス) @page50 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - 佐野さん» わーーんありがとうございます;私の中で傑作になる予定なのでぜひこれからもよろしくお願いします!!!(大嘘) (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - かわあいさん» 気づくの遅くなって大変申し訳ないです;ありがとうございます!ぜひ飽きずにみてほしいです; (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 更新楽しみにしてます〜! (2022年5月5日 20時) (レス) @page48 id: c029f451b1 (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 更新楽しみにして待ってます! (2022年4月22日 21時) (レス) @page27 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青春の餌 | 作成日時:2022年4月2日 12時