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その後はじめから『及川に予定より早めに引っ越すこと言ってなかったのか』ってメッセージが来た。引っ越したあとだ。彼はどうやら、何を思ってか私に会いに来ようとしてくれたらしい。
私はその時かなり後悔したけど、それも運命だったのかもしれない。私みたいな女より、徹にはふさわしい人がいるから、今では言わなくて正解だったと思ってる。バレンタインのあのときから彼とは連絡をとっていない。
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「ーーってな感じでさ、まぁつまるところ私が一方的に嫉妬して耐えられなくなったの。ごめん長くなって」
気づいたらもう私の家の前に着いたのに、話し出したら止まらなくて長々と話してしまった。
「……すっげー好きじゃん」
「え。や、まぁ……好きだけど、もう吹っ切ったつもり」
「Aもだけどさ、そのトオルクンもよ。お互いすんげえ好きなのに別れた意味が分かんねえなぁって。いやね、その彼を困らせたくない気持ちは分かんのよ。でも困らせたくないから話す前に別れんのはちげーんじゃねえのかなぁって」
ごもっともである。正論を言われて、何も言い返せなくなる。それどころかふつふつと後悔が湧いてくる。
「今からでも間に合うんじゃない?正直にきーー」
「わーー!!ダメ!それ以上!言わないで!」
「もごっ……オーケー。なにもいいませんよ、お嬢さん」
両手で鉄朗の口を抑える。鉄朗は両手を軽くあげて降参のポーズをした。
「決めたことだから。後悔しちゃうから、ダメ」
「Aがいいんなら、俺はいいけど。よさそうじゃないからーー」
「だから!言わないでってば」
「ハイハイ」
睨みつけると鉄朗はやれやれと首を振って諦めた。ただ徹にはもっといい人がいるから、やっと彼を諦める口実を無理やり作れたのだ。今さらどうにかしようだなんて思ってはいけない。
「もう時間の問題なの。会わなければ忘れれる。徹に彼女ができるのも、多分時間の問題だし」
「そうかねえ」
「そうです。ってごめん、長々と付き合わせて。もう暗くなってきちゃったね」
「いやいや全然。スッゲーイイことを聞かせて貰えましたよ」
「なにそれ」
鉄朗はケラケラ笑って、私の頭にぽんと手を置く。
「じゃーまた明日な?」
「うん、また明日」
そう言って手を上げて来た道を帰っていく。ずっとしまい込んでいたもやもやがやっと溶けはじめたような気がして、私はよし、と気合を入れて家の中に入った。
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きゃーぽん(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュンするし、すーっごく面白いです!更新頑張ってください!^_^ (2022年6月5日 0時) (レス) @page50 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - 佐野さん» わーーんありがとうございます;私の中で傑作になる予定なのでぜひこれからもよろしくお願いします!!!(大嘘) (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - かわあいさん» 気づくの遅くなって大変申し訳ないです;ありがとうございます!ぜひ飽きずにみてほしいです; (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 更新楽しみにしてます〜! (2022年5月5日 20時) (レス) @page48 id: c029f451b1 (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 更新楽しみにして待ってます! (2022年4月22日 21時) (レス) @page27 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青春の餌 | 作成日時:2022年4月2日 12時