2 ページ2
「じゃーまた明日聞くから！考えといてね！」
「うん、じゃあまた明日」
「ばいばーい！ 前向きな返事期待してるー！」
隣のクラスの、バスケ部の子に手を振って見送る。彼の姿が見えなくなって、私は倒れ込むように椅子に座った。そして今日一日詰りに詰まっていた溜息を一気に吐き出す。
……やっと全員帰った。バスケ部に野球部、サッカー部、テニス部、陸上部……どれも見たことすらないスポーツばっかりだ。それなのにマネージャーなんて務まるわけない。
誰もいない教室に、ノートや文房具を片付ける音だけが響く。みんなもう部活に行ってしまった。
「フンフンフフーン ンフフヌフーン♪」
とはいえやっと帰れる。自然と口ずさんだ鼻歌がこの歌なのは、彼がよく歌っていたから移ってしまったのだろう。去年まではからかわれたところだが、ここはもう宮城じゃないし教室には誰もいないからーー
「フフンフンフフ フフ……ゴホン」
ーーさっきまでは、誰もいなかったはずだ。教室を出ようとドアの方を振り返ると、そこで男子が一人佇んでいた。
まだ顔を覚えきっていないのでクラスメイトなのかすら分からないが、そうなのならたぶん忘れ物をとりにでも来たのだろう。
それで私が鼻歌なんか歌ってるから入るには入れなくなっていたというわけだ。
彼から顔を逸らすように窓の方を見ながら教室を出る。
「(恥ずかし……恥ずかし恥ずかし！！)」
教室を抜け出すと一気に顔に熱が集まった。それを誤魔化すようにイヤホンをーーあれ？
ポケットをごそごそと探るが、あるはずのワイヤレスイヤホンが片方しか見つからない。別のポケットを探るがやっぱりない。
カバンには入れてないし、となると落としたとしか考えられない。ホームルームが終わって帰ろうとした時はーー部活の勧誘に捕まる前は確かに二つあった。つまりあるならば、教室しかないということだ。
……明日探すか。いや、でも明日は明日でまた勧誘されて探せないかもしれないし、何より人の多いところで探し物をするのは少し恥ずかしい。
「(戻ろう)」
私は気合いを入れるために息を吐き出すと、覚悟を決めて踵を返した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 958人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きゃーぽん(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュンするし、すーっごく面白いです！更新頑張ってください！^_^ (2022年6月5日 0時) (
レス) @page50 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - 佐野さん» わーーんありがとうございます;私の中で傑作になる予定なのでぜひこれからもよろしくお願いします！！！(大嘘) (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - かわあいさん» 気づくの遅くなって大変申し訳ないです；ありがとうございます！ぜひ飽きずにみてほしいです； (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 更新楽しみにしてます〜！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page48 id: c029f451b1 (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 更新楽しみにして待ってます！ (2022年4月22日 21時) (レス) @page27 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：青春の餌 | 作成日時：2022年4月2日 12時
