化石の生きる世界【ポケ擬小説】 (ページ1)

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1話ページ1

時々私は自分を忘れる

比喩的な意味じゃなくて、鏡を見ると突然本当に自分に誰かが乗り移った様な違和感に襲われ、｢誰よ｣と叫んでしまう。鏡を殴って壊してしまう。水面でもだめだ。決まって石を投げて逃げたくなる。
別に、自分の顔がコンプレックスって訳ではない。自分の顔が、まるで自分のモノではないのではと思うほど、しっくり来ないのだ。

だからこそ、私は、目の前で起こっている事について驚いた。現に私は、鏡の前にいる。だが、鏡を割ることもなければ、逃げることも無い。…私は鏡に映った自分を撫でていた。

｢……初めまして…私｣

目の前の見ず知らずの少女に声をかけると、鏡の中の少女の口も一緒に動き、私が今、この少女の姿をしている事を教えていた。

だが、この少女には、前の私の面影は一切ない。
黒いストレートヘアは水色で綺麗に波打ち、黒い猫目は、丸くなり、重そうなまつ毛のせいかタレ目になっていた。口も小さくなり、耳に空いていたピアス穴も塞がっていた。

夢だと嫌だなと思いながら頬を抓る。すると自然と顔の近くに来た手を見ると、少し前にいた世界の記憶がどっと押し寄せてきた

｢そうだ…私、あの時｣

リスカの消えた手を、私は呆然と眺めた。