ぬらりくらりと

11話 ページ13

黒田坊side

「申し訳ありませぬ！」

大丈夫だと言ってくださるリキト様にもう一度謝る拙者。本当に申し訳ない事をしてしまったのだ。

『本当に大丈夫だよ。黒田坊』

ふわりと微笑まれるそのお姿に見惚れてしまった。今はそのような時ではないのにも関わらずにだ。

「ですが、っ！？」
『本当にもう、大丈夫だよ。気にするな。それとも何時までも俺の顔を見てそういうつもり？』

優しい声色に地面に顔をつけていたのを上に上げると思った以上にリキト様の顔が近くにあったのだ。拙者は声にならない声が出た。あのお綺麗な顔が近くにあるのだ。幼少期からあまりにも綺麗だったため切られなかった髪が拙者の頬を撫でる。その感触が一層リキト様を近くに感じた。

「は、はい…」
『ふふ。よろしい』

それ以上何も言えなくなり返事を返すといたずらを成功させたような顔が離れていく。その顔すら綺麗に見えてしまう拙者はおかしくないと思う。
そんな事を考えているといいこと思いついた！と言わんばかりの顔でこう言葉を繋げた

『ねぇ、俺に剣術教えてよ』
「え……」

相当情けない顔をしていると思う。リキト様から言われた言葉はそれくらいの威力を持って拙者の耳に届いた。

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