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「落ち着けよデュースくん!」
Aに怒鳴られ、きつく羽交い締めされたところで、やっと俺は我に返った。
こんな体格差でよく制止できるな、なんてくだらないことを考えられる余裕があったのは、ほんの数コンマ分だけ。
怯え切って逃げていくチンピラと、気圧されて小さくなっている監督生たち……それを見た瞬間に「やってしまった」という遅すぎる後悔が押し寄せてくる。
____俺は、改心するはずだった。この学園で、清く正しい優等生になるはずだったのに。
何を怒鳴ったなんて覚えていない。もしかしたら俺は彼奴らを殴ったのかもしれない。
……ただ、監督生に手を出してきた彼奴らを。何より、何もしていないAに手を上げた彼奴らを許せなかった。
自分があまり気の長い方ではないことは重々自覚しているが、ここまで瞬間的に爆発してしまったのは初めてのこと。
____まあそんなの、言い訳にしか過ぎないが。
「先に手出した方の負けなんだからな! 卵はまた鶏さんに産んでもらえばいいんだぜ」
「あの卵は無精卵だから元々ヒヨコは孵らないよ」
「オマエらもうちっと人の心を理解した方がいいと思うゾ……」
どんな励ましの言葉をかけてもらっても、いつものように元気になれる気力などは残っていない。
「デュース、そんなに肩を落としてどうした」「気持ちわりーくらい落ち込んでんね」厨房に戻ってからも、先輩やエースに心配されてしまった。
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あの後、どうやってケーキを完成させて、どんな足取りで寮まで戻ってきたのか全く覚えていない。
薄らと『着替えとか色々持ってオンボロ寮集合な! ついでにオレの荷物も持ってきて』とエースに言われた記憶があるので、とりあえず荷物をまとめてみた。
適当な鞄に全部突っ込み、肩に担ぎ上げてから、あまり軽やかとは言えない歩みで、寮の鏡を潜る。
「ここから歩きか……」そんなことに気付いてしまい、軽く気を落としながらオンボロ寮へ向けて歩き出す。
「はあ……」
「そんなため息ばっかだと明日のご飯が美味しくなくなっちゃうぜ」
「!?」
心臓が止まるかと思った。
いつから居たのだろう、突然、Aが死角からひょいと俺の目の前に現れた。
驚いた俺の反応を、目を細めて可笑しそうに笑うA。
かわいいな、なんて思ったりする。
「な、ちょっとおれと来て欲しい」
「ああ、わかっ……____え?」
え?
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茜(プロフ) - 与太話さんおかえりない!!更新楽しみに待たさて頂きます (3月24日 1時) (レス) @page40 id: 6b9c28a133 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 何度も繰り返し読み返しては、ゲラゲラ笑わせていただいております!またいつか更新かかるといいなぁ (11月21日 15時) (レス) @page40 id: dba6e6f19e (このIDを非表示/違反報告)
るきあ(プロフ) - 殿堂入り?!すげー!!絡ませるの難しいですがチェーニャと絡ませて頂ければ嬉しいです!アッ、イデア氏も… (2022年2月1日 12時) (レス) id: e2065bbc2b (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します!ふわ〜!!えっ神作過ぎません⁇作者様ホントに人間ですか?えっ文才の神様だったりしません⁇私と比べたら月とスッポンどころか宇宙とそこらへんのゴミですよ、、、天才すぎる、、、更新楽しみにしてます! (2022年1月4日 18時) (レス) @page39 id: c0c52854c4 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー - ケイト先輩の夢主?の前では素を出してる感じ好きです!なんか闇ありそうだし続き楽しみ! (2021年12月27日 2時) (レス) id: cff29dd65c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:与太話 x他1人 | 作成日時:2021年10月26日 21時