緑のクローバーの ページ31
｢へっくしょい！｣
オクタヴィネル寮からの帰り道、Aは両手に制服の入った袋を抱えながら渡り廊下を歩いていた。
秋といえども、風が吹けばもう寒くなってくる時期。
彼女……いや、“彼”はブレザーの買い直しも出来ていない為、今着ているのはワイシャツのみで。
寒そうに足の下で尻尾を丸めて身震いをする。
そんな完全に緩みきった警戒心の中でも、後ろから向かってくる気配くらいには気付くようで、鼻水をすすりながらゆっくりと後ろを振り向く。
｢A｣
｢ハーツの副寮長｣
にっこりと人当たりのいい笑みを浮かべるトレイとは対照的に、Aは口角を引きつらせている。
｢頼みがあるんだ｣Aの態度に気付いていないのか、気にしていないのかそんなことを言い出した後、｢ちょっと来てくれ｣返事も聞かずにAの肩を抱いた。
｢へ、あ、なんすか？｣
｢いいから｣
Aは頭上に疑問符を浮かべながら、されるがままに彼について行った。
________________________
｢おお、意外と手際がいいな。流石だ｣
｢そりゃどーもっ｣
ハーツラビュル寮のキッチンにて、並んで作業をする2人。
トレイが次の材料を用意する傍らで、Aはぶつくさ文句を言いながらタルト生地を平たく広げていた。
またハーツラビュルにいいように使われている気がして、苛立ちでAの腕に力が入る。
それを見逃さなかったトレイが、すかさず｢力を抜いた方がいい。力を入れれば確かに伸ばしやすいが、均等にはなりにくいから｣とアドバイスをしていた。
また数刻経ち、最後のタルト台がオーブンに入れられる。
トレイが｢よし｣と達成感に溢れた声を上げた。
｢まあこんなもんだろう。ありがとうな、A｣
｢べつにいいですけどー……なんでまた急にこんな量のタルトを作ることに？｣
ぐでーっと冷蔵庫にもたれかかるA。粗熱を取っている最中のタルト台を横目で眺めながら質問を投げかけた。
｢昼に揉めてたエースのあれだよ。あいつがうちの寮に戻るには、タルトを返さなくちゃならないんだ｣
｢ほーん。……ハーツの副寮長、お人好しですよねぇ。新入生の不始末をわざわざ貴方が片付けなくてもいいんすよ。特にあのトラッポラのなんて｣
｢ははは、そういうわけにもいかないだろう。……お人好しと言ったら、Aも十分それに当てはまると思うぞ？｣
｢そうですかね……？｣
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茜(プロフ) - 与太話さんおかえりない！！更新楽しみに待たさて頂きます (3月24日 1時) (
レス) @page40 id: 6b9c28a133 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 何度も繰り返し読み返しては、ゲラゲラ笑わせていただいております！またいつか更新かかるといいなぁ (11月21日 15時) (レス) @page40 id: dba6e6f19e (このIDを非表示/違反報告)
るきあ(プロフ) - 殿堂入り？！すげー！！絡ませるの難しいですがチェーニャと絡ませて頂ければ嬉しいです！ｱｯ、イデア氏も… (2022年2月1日 12時) (レス) id: e2065bbc2b (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！ふわ〜！！えっ神作過ぎません⁇作者様ホントに人間ですか？えっ文才の神様だったりしません⁇私と比べたら月とスッポンどころか宇宙とそこらへんのゴミですよ、、、天才すぎる、、、更新楽しみにしてます！ (2022年1月4日 18時) (レス) @page39 id: c0c52854c4 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー - ケイト先輩の夢主?の前では素を出してる感じ好きです！なんか闇ありそうだし続き楽しみ！ (2021年12月27日 2時) (レス) id: cff29dd65c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：与太話 x他1人 | 作成日時：2021年10月26日 21時
