闇の鏡の前で反復横跳びすんな

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｢あ゛〜調子狂う〜〜〜……｣



頭を乱暴に掻きながら、とぼとぼハーツラビュルの石畳を歩く。
まだ明るかったはずの外は夕焼けも沈み掛けの景色になっている。

あの後、2時間くらいは人の心があんまりない先輩たちに遊ばれて、先程やっと解放して貰えた。
いや、解放というよりも無理やり逃げてきたのほうが近いかもしれない。

｢ジャックく゛ん゛がお腹を空かせて待゛ってるんです!!!!｣｢お゛家に゛返゛して!!!!｣と騒ぎ散らし、相手が怯んだところを抜け出してきた。
大声で威嚇すると怯むのは獣人だけではないんだな、と少しだけ勉強にもなった。


元の目的であったお礼参りも、憂さ晴らしもなんだかんだ達成できなかったし、今日は散々だ。
もうハーツラビュルには来ない。
もうあの心があんまりない先輩たちに遊ばれるのは懲り懲りである。



｢キミ、そんな格好でどうしたんだい!?｣

｢へ｣



前方からこちらに駆け寄ってくる小柄な赤髪を発見。

またハーツか。おい、またハーツか。
そう思いながら露骨に顔を歪めていたが、このハーツ寮生、すごく見た事がある気がしてならない。



｢ああっ、今年の新入生はどうしてこうも問題ばかり起こすんだ……! ハーツラビュル寮の寮長としてこれでは……｣

｢リッ、ﾘﾘﾘRiddle Roseheartsｻﾝ……｣

｢……随分と流暢に喋るね？｣



もうやだ！ 今日は先輩とのエンカウントが多すぎる！ しかもそのメンツが色々と強くて濃い！

まさかハーツラビュルの寮長様、リドル・ローズハート先輩と鉢合わせるなんて、最悪だ。

＿＿＿＿最悪？



｢ああああ!!｣

｢!?｣

｢ちょ!! 聞いてくださいよハーツの寮長様!!｣



＿＿＿＿何が最悪だ！ 今朝の厄災を今報告して憂さを晴らすべきだろう！

ハーツの寮長様の返事を聞く前にハーツの寮生にいかに酷い仕打ちを受けたか、ということをマシンガンの如く語り出す。
最初はなんだこいつみたいな顔をしていたハーツの寮長様も、話が進むにつれてどんどん呆れたような疲れたような表情に変わっていった。

はあ、とひとつため息をつく。



｢キミがうちの寮生の被害者だったんだね。代わりに謝るよ。申し訳ない｣

｢ほんっっっとどういう教育してらっしゃ!! ……いや、ハーツの寮長様は悪くないです……当たってごめんなさい……｣

｢構わないよ。僕の監督が行き届いていないことも原因の一つだ｣



あっ、すっごい。人の心があんまりない先輩たちとは打って変わってまともな人だ。すごい。

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