ヘイヘイシショー！！・二ノ陣！【木兎 光太郎】

51.約束のシショー ページ13

木幡side






【そして俺は、戦うことを諦めた】






「ダイジョーブだよ、なんともねーから！ちゃんと実家に帰ってもバレーするからさ！」




「一度だけ、コータローに嘘をついた。俺は、その大好きなことを、諦めた」



無言のまま、俺の抱きついたコータローが、ギュッとユニフォームの端を握ってくる

柔軟なインナースパイクを打つ器用な腕と反対に、


不器用に心配を伝えてくるーー「シショー、辛かったら話さなくっていいんだぜ」って、言葉を持たないコータローの右腕が伝えてくる


念には及ばんよ、コータロー



(全国制覇(天下取り)なんて、大業な夢をアイツらと我武者羅(がむしゃら)に追いかけてた俺が、今じゃこの様だ。

やって来た夢を追う奴らに、体育館の場所を教えて、宿舎の案内をして、マキをわって、皿を洗って。

与えられた役目を淡々とこなしていくだけの一日を送ってるんだ)


あの時と比べたら、俺は強くなったから


バチッと炸裂音が耳に届いた
遅れてやって来た頬の熱い痛みで、俺はコータローに殴られたんだと悟った


「シショーは何度だって立ち上がれる！シショーは言ってた！
【必死に生きてこそ、人の一生には、その人だけの価値がある】って！

今のシショーは全然必死に生きてない！戦ってない！
シショーがもっと強くなって、あの人に言ってやればいいじゃんか！


また、俺の隣に立てって、俺にサイコーのトスをくれって、言ってやればいいじゃんか！


左手があがら無くたって、レシーブも、スパイクも、ブロックも、難しくても、トスも右手一本でできる！
きっとそれはむずかしーんだろーけど、シショーに出来ない訳がないッ！



だって俺の、自慢のシショーだから！」





お前の言葉に、救われたんだ




「夢を諦めた俺をコータローがぶん殴ってくれた。目を覚まさせてくれた。
そんな人生の恩人に、「俺だけのシショーでいてくれ」って頼まれたんだ。

だから俺は、君のシショーにはなれない。


大切なコータローと、約束したから」





「ホントーに、俺なんかがシショーでいーのか？」

「いーの！シショーにはずっと、俺だけのシショーでいてほしーんだ！

だから、シショーが強くなったらまた会おう、それまで暫くお別れだ！」

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