眠れない夜には (ページ1)

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PM 23:00

わたしの夜は早い。

普通のOLだから毎朝同じ時間に起きて、夜はなるべく早く眠る。
それは予定がなければ華金と呼ばれる週末だって同じこと。

ルーティーンはあまり崩したくない。

携帯は、枕元に置く。

AM 1:00

「…もしもしヌナ？ごめん起こしたよね」

「うん…だいじょぶ…すぐ開ける」

ロックバーを外しカチャリと鍵を開ければ、同時に外側から開かれるドア。そして滑り込むように部屋に入ったらまたすぐに閉められる。
現実が遮断された瞬間。

「ヌナ、ただいま」

そう言って目深にかぶっていたキャップをはずせば、伸びた前髪をうざったそうにふるふると頭を左右にふりながらニッと笑うベク。

あぁ今日も可愛い。

そのふわふわの頭を撫でながら、私も答える。

「おかえり、ベク」

「うん」
頭を私の肩にあずけたままポツリと返事を返すベクからは、普段テレビで見るような姿は想像できなくて、こりゃ年老いたビーグルだななんて一人で考えてたら肩が揺れてたみたいで。

「ヌナ笑ってる？」

あ、ばれてる。

「ん？ちょっと思い出し笑いしただけー。てかいつまで玄関いるのよ。入ろ」

「ん、入る」

キャップを玄関のラックにかけて、かごから自分用のニコちゃんマーク付きのスリッパを出して、テクテクと後ろをついてくる。

この姿は私だけが知ってる。

たぶん。