71.不整脈がひどい ページ31
「帰って」
「！」
Aは、武道から目を逸らして、扉の方へと歩いていく。
武道もソファから立ち上がった。
「待ってください！！
……だって、あんなにマイキー君を慕って……」
「〜〜帰れッ！！」
びくっと武道は体を震わせた。
Aの大きな声を聞くのは初めてだった。
……これはきっと何かがある……。
Aの怒鳴り声は、武道をこの場に留まらせた。
「お願いします、教えてください！！
どうしてキャバ嬢なんてやってるんですか！？」
「……」
Aは、ドアノブに置いていた手をおろした。
おもむろに武道達の方を振り返った。顔は驚くほど無表情だった。
「……マイキーが……東卍をやめろって言ったから、やめた」
「っなんで、A君が」
「さぁ？ ……わからない……」
声が段々と弱々しくなり、やがて俯いた彼女に、何も言えなかった。
「わからないから、ココで働いてる」
「へ？」
「東卍の系列店だから」
Aは自身を嘲るように笑った。
武道は息を呑んだ。Aの言わんとしていることがわかってしまったからだった。
「離れていても、どこにいても、嫌われても。
私は彼の役に立ちたい。
生憎、それだけが生き甲斐なんだ」
Aは、店の売り上げに貢献することで、間接的にでも東卍の役に立とうとしたのだ。
反社会組織からやめろと言われたら、普通、第二の人生を歩もうとするだろうに……。Aはキャバ嬢になることを選んだのだ。しかも今は、この大きな店の中でNo.1だという。
人生すべてを捧げるほど、Aは東卍を……否、違う。
「マイキー君を、愛してるんですか」
「え……？」
「え？ ……あっ、いや」
しまった、と武道は思った。
思いがけず変なことを口走ってしまった。冗談と言うには、もう遅い。
武道は下を向く。Aの顔を見れないからだ。
「……もう、行くね。
君たちも好きな時間に出て行っていいから。
……タケミっち」
武道は顔を上げる。一瞬Aと目が合ったが、Aは一言呟いて、逃げるように部屋を後にした。
たった一言の、Aの呟きが頭に残っていた。
『どうしてわかっちゃうかな……』
＊＊＊
後日、ナオトから聞いた話。
歌舞伎町No.1キャスト“A”の死体が発見されたらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わがはい(プロフ) - りなさん» そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます。励みになります！ ご指摘ありがとうございます。名前の変換修正いたしました。 (2022年4月20日 15時) (
レス) id: fe7c1fcf9f (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すごく面白いです✨更新これからも楽しみにしてます💕あと名前の変換ができてないです…😢 (2022年4月20日 9時) (レス) @page2 id: 047ec70aff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わがはい | 作成日時：2022年4月19日 19時
