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いつになくおどおどするニュートを余所に、ティナは彼に向き合って背筋を伸ばした。一刻も早く帰ろうとする彼をクイニーがここぞとばかりに引き留める。「愛しの彼女は待っててくれないわ」そう言うと、渋々彼はトランクを置いてティナの顔を見た。
「私を彼女に見立てるの_____」
「でもAはティナほど背が高くないし、少し猫背なんだ……手はいつも行き所がなくて後ろで結んでる」
「ティナ、彼 かなりゾッコンみたい」
「ええ、そうね」と額に青筋が浮かびかかっているティナは、くるりと踵を返してニュートを突き放した。クイニーは困惑した表情を浮かべるしか方法がなかった_____ここにジェイコブが居てくれればもっと楽なのに!ティナは心のどこかで感じていた高鳴りにすぐ蓋を閉め、何重にも紐で縛った。こんな人、一度だって素敵とは思わなかった_____そう呪文のように唱えなければ、今すぐにでも涙が溢れてしまいそうだったのだ。
「……それで、僕をいつも睨みつけ、」
「ティナ?」ニュートはすっかり黙り込んでしまった彼女の顔を覗き込む。どうして彼女が自分よりも泣きそうな顔をしているのかが、彼には分からなかった。ティナの方に手を伸ばしても、すぐに振り払われる。
「ニュート、とにかくあなたが思っていることを全て言ってしまえば良いのよ」
「ちょっと激しめが好きな彼女だもの!」
「彼女とどうしたいか、どうなりたいのか_____もう!ホグワーツで習わなかったの?」
「習ってたら困ってなかったよ」
トランクを持ってドアノブを回そうとしたニュートは、いきなり後ろに重力が掛かったせいで体がよろけてしまった。クイニーがあっ!と声を上げる。呆気にとられて彼が振り向くと、苦虫をすり潰したような表情のティナが裾を握っていた。
ティナはこれまでにない程混乱していた。今自分の口から出てくる言葉がどんなに最低か彼女は自覚していた。こんなに汚い感情なんか捨ててしまいたい。クイニーにバレることを承知して、彼女は自分がこれ以上傷付かないために行動に出たのだった。______「いつでも、私は待ってるから」もう遅いとも思ったし、しまったとも思った。それに、良くやったとも思っていた。これで、彼が更に訳が分からなくなってしまえばいいのに、とティナは思った。ニュートにその言葉の真髄が伝わったかは分からないまま、彼は部屋を後にした。
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くさの(プロフ) - 初音さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けるだけでも嬉しいです。私は上手に恋愛ものが書けないのですごく悩んだんですが安心しました。拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします! (2018年12月14日 6時) (レス) id: d0d75d00f1 (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - 申し訳ございません。作者様の作品がいかに素晴らしいかをお伝えしたいのですが語彙力が足りません。在り来りでいいのなら、とても綺麗で切なくて甘い素敵な作品だと思います! (2018年12月14日 0時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くさの | 作成日時:2018年12月9日 15時