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あんまり真面目な眼差しでそうニュートが言ったものだから、Aは耐え切れなくなってとうとう吹き出してしまった。それでも二人は幸せの二文字で満たされていた。一通りのキスを終えた後、ニュートはまだ彼女に覆い被さっていた。Aは____この後に普通のカップルが行う恒例行事____が何となく想像はついていたが、なんせ相手はあのニュート・スキャマンダーだ。初対面の人が苦手で、もっと言えば人間が苦手で、兄さんが苦手で、少しオタク気質な______あの!
「ニュート」
「なっ、なに……」
「何ってなによ」
「…………分かってるけど」
突然拗ねた口調のニュートに、Aは内心深いため息をつく。意気地があるのか無いのか、いや、彼は別にそういう事が下手ではない。_____それを、彼女だけが知っていた。けれど、Aを抱いたことなどニュートは覚えていないのだ。完全に自分の撒いた種であったが、Aは寂しささえ感じていた。なんて自分はバカなんだろう!
「分かった。もう隠しごとは無しにする」
「ほんとに?」
彼は半分以下も信じていないようだった。けれど顔は少し綻んでいる。何故だか喜んでいるようだった。「ほんとよ」と彼の頬を包み込んで、ザラついた、雀斑のある頰に指を滑らせて_____深く頷く。
「ニュートって、上手よ」
その時のニュートの素っ頓狂な声と言ったら、それこそ後世に語り継ぎたいような話の頂上に立てるくらいだった。言葉では言い表せないような、二人だけの秘密。Aはニュートが変(変と言うと彼が厭がるのでユニークと言い直す)だということを誰よりも知っているつもりだったが、その反面彼女もかなりユニークだった。二人は案外似た者同士なのだ。
「魔法を悪事に使うのはやめにすることをここに誓うわ」
「……やっぱり、夢じゃなかったんだね」
あからさまに落ち込む彼を見て、Aは謝ろうとした_____それを塞ぐようにまた吸い寄せられるように、まるで磁石みたいに軽いキスをする。Aは、何だか泣きそうな気分だった。ニュートってとんでもなく良い人だもの!彼が夕食時に飲んでいたココアの甘ったるい味がした。それなのに、何故か切ない。
「____一瞬よね。人間って、永遠なんて有り得ないと思いながら望んでしまうものなのよ」
「……一瞬じゃない永遠だよ。僕だけを見て、ずっと」
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くさの(プロフ) - 初音さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けるだけでも嬉しいです。私は上手に恋愛ものが書けないのですごく悩んだんですが安心しました。拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします! (2018年12月14日 6時) (レス) id: d0d75d00f1 (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - 申し訳ございません。作者様の作品がいかに素晴らしいかをお伝えしたいのですが語彙力が足りません。在り来りでいいのなら、とても綺麗で切なくて甘い素敵な作品だと思います! (2018年12月14日 0時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くさの | 作成日時:2018年12月9日 15時