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ニュートは彼の魔法動物と同じくらいに、彼女のことを大切に思っていた。
彼女はもともと不安定な瞳をさらに泳がせて、ついにニュートから目を逸らした。ニュートは慣れているはずのその動作に、不安に陥れられた。やはり自分は、可笑しいことを言ってしまった。
「ニュート、」
「いや、その…ちょっとした冗談を」
「…気にしないで」
いつもこんな調子だった。目を伏せると、彼女の頬にまつげの影が伸びる。ニュートは、その仕草がたまらなく好きだった。______そんなことを言ってる場合じゃない!
「あ、A まって」
「アメリカで習ったの?」
「それは関係ないよ」慌てて彼女の腕を引っ張っる。彼女は案外あっさりとニュートの中に倒れこんだ。それに驚いていたのは、何よりもニュートだった。この後どうすればいいのだろう、と頭の中で糸が絡まるのが分かる。
いくら人のことに鈍いニュートとは言え、彼女が最近沈みがちだったことは承知済みだ。いつから______それは、アメリカから帰った後_____に間違いはないのだろうけど。
「あの…本当に、何もないんだ……A」
「ティナに宜しく伝えておいて」
「ティナは……そんなんじゃ_____」
彼女の口からティナの名が出るとは思わず、ニュートは目を見開いた。自分は何か彼女に嫌なことでもしてしまっただろうかと再び不安になる。彼女の肩を包もうとして、一瞬指が怯んだ。中々視線を合わせようとしない。人と目を合わせることが苦手なニュートも、今だけは必死に頑張っていた。
彼女の身体を抱く腕に力が入る。髪の毛を掬うと、自然と瞳がぶつかって、今度は離れようとしない。瞬きをしてしまえば、もう一生合うことのないような気さえした。
「変わってしまったのね」
変わることは良いことだと教えてくれたのは君だと言うのに!________ニュートは叫んでやりたい衝動にも駆られたが、それも喉奥で堪えた。僕は何も変わってなんかない______けれどAが言うのなら、そういうことなんだろう。
次の台詞が分かっていたからこそ、ニュートは心の底から耳を塞ぎたいと思った。
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くさの(プロフ) - 初音さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けるだけでも嬉しいです。私は上手に恋愛ものが書けないのですごく悩んだんですが安心しました。拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします! (2018年12月14日 6時) (レス) id: d0d75d00f1 (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - 申し訳ございません。作者様の作品がいかに素晴らしいかをお伝えしたいのですが語彙力が足りません。在り来りでいいのなら、とても綺麗で切なくて甘い素敵な作品だと思います! (2018年12月14日 0時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くさの | 作成日時:2018年12月9日 15時