67羽 ページ28
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「凄いな、これ。」
菅原が日向と影山に対して何の話をしているのか気になる気持ちは、つい先ほどまでAの心にはあった。そう、つい先ほどまでは。
伊達工の圧倒的な威圧感と迫力に、その思いは押しつぶされた。ギャラリーで応援する人数といい、アップのこなし方といい、烏野とは何もかも規模が違う。Aは1人でギャラリーにいるのがなんだか恥ずかしくさえ思えた。
刻一刻と迫ってくる試合開始時間。青城との戦いのため、烏野の更なる飛躍のため、絶対負けられない試合の開始は直ぐそこまできていた。
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ついに時間は試合開始時刻へ回った。主将、という審判の合図で澤村と伊達工の主将が握手を交わす。烏野のアップは先にレシーブとなり、会場が伊達工ムードの中、選手たちが緊張の面持ちでレシーブをつなぐ。
「お願いだから呑まれないで……。」
Aが切実な願いを呟いたときだった。
「ロォォォリングサンダァァァ!アゲインッッ!!」
西谷の声が会場に響く。ただの回転レシーブ、なのだが、盛大な技名をつけて豪快に決められたそのレシーブに皆がふきだして、烏野の空気が和やかになった。
「(こういうときの西谷さんの安定感……本当に頼もしい。)」
不安を破ったその明るい声と表情にマネージャーのAまでもが励まされた。
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選手たちがコート内に入りそれぞれのポジションに立つ。ピーーッ、とけたたましい笛の音が響いて、試合の開始が告げられた。
伊達工のサーブで試合が始まる。そのサーブを澤村が拾って、きれいにセッター影山のもとへ返る。そして日向は既にスパイクをうとうと飛び込んできていた。
「(一発目、まずは日向影山の速攻見せつけて相手をビビらせ―――)」
影山の手から精密なトスが送られる。乱れは無い、完璧ないつもどおりの速攻……しかし、一発目から伊達工のブロックは飛びついてきた。その反応の速さにAは驚きに顔を染める。
一瞬で対処して来たことに日向は混乱しながらも、弱くスパイクを打つ。7番の腕に当たったボールはかろうじてそのまま相手コートに落ちた。
先制点は烏野……しかし、あまり喜べない1点だ。
「(2人の速攻に一発目でついてきた……。)」
その規格外なブロック能力にAは思い切り顔をしかめる。これが烏野のエース、東峰を苦しめた伊達工の鉄壁のブロックだ。
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ラー油 - すみません たしか西谷さんの回転レシーブはローリングサンダーだと思います。 (2021年4月4日 8時) (レス) id: 0628ebf5e7 (このIDを非表示/違反報告)
Sacco - 47羽目にセットアップとなってますが、セッターではないでしょうか?突然申し訳ありません。とても素敵な小説ありがとうございます。これからも応援してます。 (2016年8月8日 14時) (レス) id: f404a711c2 (このIDを非表示/違反報告)
花宮幸ヤ(プロフ) - さっこさん» すいません!ありがとうございました! (2015年8月31日 21時) (レス) id: 0d803f7706 (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - 朝日になっています (2015年8月31日 20時) (レス) id: 92e8049c9f (このIDを非表示/違反報告)
花宮幸ヤ(プロフ) - 人生オワタな奴さん» そうですか、よかったです!いえいえ、大丈夫ですよ!私は結構誤字が多いので、これからも見つけたらよろしくお願い致しますm(._.)m (2015年8月22日 16時) (レス) id: 0d803f7706 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 x他2人 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2015年8月13日 10時