110羽 ページ25
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その後の影山はずっとむすっとした表情でいた。不愛想で硬い表情がより一層際立っており、そのせいかどこか周りの人が目を合わせようとしない。そんな影山の雰囲気を肌で感じつつ、苦笑いしながらAは隣を歩いていた。
「……じゃ、私はここで。どうせ体育館行ってみるんでしょ?」
「……おう。」
足を止めて2人は向かい合う。未だにすっきりしない表情でいる影山に短くため息をついてから、Aは彼の目をまっすぐに見つめた。長いまつげから覗くガラスのような瞳は今、影山だけを映している。
「ねえ、飛雄。」
真剣な声色と顔つきで呼ばれて、影山はハッとした様子でAを見た。白い肌や髪を夕焼けの淡いオレンジ色に染め、凛と佇むその姿。絵にかいたようなその姿に、影山は思わず息をのんだ。あまりにその姿が綺麗だったから。
見惚れていたという事実と、それに伴い紅潮した頬に気づいたのか、影山は慌てて目線を斜めにそらした。「なんだ、急に。」とぶっきらぼうに返事した彼に対しても、Aはまっすぐ言う。
「……バレーが個人競技じゃないこと、分かってるよね。」
その言葉に、影山は目を見開いた。それから何かを考えこむように俯いて、ぎゅっと拳を握り締めて下唇をかみ締める。
「……あぁ。」
悔しそうに小さく返事をした影山を見て、Aは強張らせていた表情を緩めた。いや、というより緩んでしまった。自分の行いを悔いて省みれるようになったのはいい成長だ。「うん。それが分かってるなら大丈夫。」と小さく頷いてから、Aはもう一度影山と目を合わせた。
「どれだけ悩んでもいいし、壁にぶつかってもいいんだよ。……ただ、もう"戻っちゃ"いけない。王様だなんていわせるな。飛雄の周りには翔陽も先輩たちも……勿論私だっている。もう1人で悩まなくていんだよ。」
中学時代、自分が抱える理想と環境とのギャップに悩まされた。その境遇は自分と似ているから。話すうちに次第にそこに含む感情が大きくなってしまって、Aは意識せず表情を柔らかく緩め微笑んでいた。
別に、表情に乏しいわけじゃない。けれどこういう風に笑うAは初めて見たような気がして、影山は言葉も返せず立ち尽くした。「じゃあね。」と手を振って自分に向けられたその背中を呼び止めようとして、かける言葉が見つけらなくてやめる。影山の頭からはしばらくその顔が離れなかった。
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希(プロフ) - 130羽の三大が三台になってます。たぶん三大だと思います。 (2017年7月18日 21時) (レス) id: b9f12d00ff (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - ページ29の"低空飛行"が"低空引こう"になってますよ! (2016年12月26日 17時) (レス) id: 476a1e2e74 (このIDを非表示/違反報告)
花宮幸ヤ(プロフ) - ミッキーさん» 長い間レスできずに申し訳ないです…。そちらの方を長い間更新止めててすいませんでした(;-;)これからコツコツがんばりますので、これからも見ていただけたら幸いです(´×ω×`) (2016年8月3日 13時) (レス) id: 16a4b4f29a (このIDを非表示/違反報告)
ミッキー - テニスの王子様の更新をしてください!楽しみにしてます。 (2016年7月24日 19時) (レス) id: f565134c71 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - 汐李さん» ノンノンノン!← 赤葦、木兎さん、リエーフ、夜久さんが好きなのでそれぞれ字を取りました(*´ω`) (2016年3月22日 23時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 x他2人 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2016年2月27日 3時