これからも / t ページ7
「お…っと、危ないってば」
「えっ」
涼しい日だった。夜風が、火照った私達の頬を撫で気持ちが良い。はっとして見上げると、すぐそばにスーツを着ている彼の姿があった。
「あれ、なんで…」
「お前に呼ばれて来たんですけど〜」
会社の飲み会の最中、酔っ払った私は彼に「もう1人じゃ帰れない、迎えに来て」と電話してしまったらしい。やばい、記憶にない。
飲み過ぎには気を付けろって言ったのに…と呆れたような声を出す彼だけれど、その言葉とは裏腹にしっかりと私のことを支えて歩いてくれている。こういうところが好きだなあ。
ふと、彼がスーツを着ていることに気がつく。
「ねえ、もしかして会社から直で…」
「うん」
真っ直ぐ前を向いたまま、彼がこくっと頷いた。やばい、怒ってるかな。確か今日は彼が楽しみにしていた番組が放送される日だったはず。早く帰りたかっただろうに、わざわざ来てくれたんだ…
「…ごめんね」
謝って済むわけじゃないとわかっているけど、今はこうすることしかできなくて。私たちの足音だけが空間を支配している。2人の距離は近いはずなのに、すきま風がひゅうっ、と彼との間をすり抜けた気がした。
「あー…このままさ、俺ん家来る?」
「へ?」
あまりにも予想外の返答に、間抜けな声をあげてしまう。え?お家?友哉くんの?
「ちょうどコンビニのデザート2つあるし。腹減った」
そう鼻をすすりながら言う彼の口から、白い息がこぼれ落ちた。じんわりと目の前に空間に溶け消えてゆく。
「…いいの?」
恐る恐る彼のことを見上げると、切れ長の瞳と目が合う。そのまま3秒ほど見つめ合うと彼の左手が私の頭上に置かれた。
「いちいち確認すんなよ」
にやっと笑うと、先ほどより少しだけ歩幅を広くして歩き始めた。わかりやす。
これから君に、何を話そうか。そう考えただけでわくわくが止まらない。どんな反応してくれるのかな。どんな言葉で返答してくれるのかな。思わず口角が上がってしまい、彼のことを横目でちらっと眺めた。
少しだけ、耳が赤い気がした。
寒いのかな。それとも照れてる?あとでゆっくり聞いてみることにしよう。
「友哉さん」
「はい」
「いつもありがとうございます」
「ほんとだよ」
________________
いつの間に順位が…!ありがとうございます(T . T)
短編が本当に本当に苦手なのでお恥ずかしい限りです。これからも頑張ります◎
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作者名:ma | 作成日時:2020年1月31日 22時