バレンタインSS / k n ページ3
「 はい、チョコあげる 」
k
「え？」眉間にシワを寄せて顔を上げてくれた彼に、丁寧にラッピングされた箱を差し出した。そういえば、と思い出したかのような顔をすると口角を上げながら受け取ってくれた。小柳さんと過ごす初めての2月14日。チョコを手作りしたのも実は初めてで、お口に合うかな、と少し緊張してしまったり。「今食べていい？」いつ聞いても、このひとの声はどんなお菓子よりも甘い。甘すぎる。くらくらしてしまいそうだ。私がゆっくりと頷くと、彼は箱に巻かれた真っ赤なリボンを丁寧に解いていった。私の緊張も一緒に逸れてくれないだろうか。「…すげえ」白い箱を開けると、彼の瞳がきらきらと輝いて見えた。嬉しい。「本当に手作り？」にや、とからかうように顔を覗き込まれる。失礼な。手作りだよと言い返しながら軽く肩を叩くと、ごめんって笑いながらチョコレートを口に運んだ。思わず唾を飲み込んで、ぎゅっと服の袖を握ってしまう。彼はなんて言うだろう…。「…ん、美味いよ」ありがとう、と呟くと大きな掌が私の頭を撫でた。…ほんとうに？「いや、嘘つかねえよ」甘すぎると嫌かなあと思って、砂糖控えめにしたの！「おお、わかってんじゃん」とっても嬉しくて、彼に抱きついてしまう。ああもう身体、勝手に動かないでよ。「お返し、何欲しい？欲しい物ないの？」と問われるけれど、そんなのすぐに思いつくはずも無くて。もう、その声で私に愛を囁いてくれれば、十分だよ。なんてね。
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「やったあ、待ってました」世間の男性はバレンタインなんてどうでもいいと思っている人が多いみたいだけれど、私の彼氏は1週間ほど前から心待ちにしていた。「今年は何作ってくれたの？」頑張っちゃったから見て。透明な袋でラッピングしたものを差し出すと、ありがとう！頂きますと丁寧に受け取ってくれた。ねえねえ、早く食べて？「はは、焦んないの」子供をなだめるかのような態度に、彼からしてみればまだまだ私も子供なんだなあと実感させられる。彼がぱくっとそれを食べると、すぐに目を丸くさせてこちらを向いた。「ほんと、料理上手くなったね」えへへ、本当に？彼と付き合い始めてから全くできない料理を教わり始めたので、彼色に染まりつつあるこの頃。こうやって実感する瞬間が嬉しかったりする。「いい奥さんになれるね、おれの」こういうことをさらっと言える彼はずるい。本当に。「お返しのチョコ手作りするかなあ〜」一緒に作る？「それじゃ意味ないでしょ笑」
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作者名：ｍａ | 作成日時：2020年1月31日 22時
