初めての一目惚れ 2 【及川徹】

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「お前が頼むって言ったんだろうが」


その言葉にハッと我に帰る。



『いや、でも』



「…だったらちゃんと振ってやれ。


もう顔も見たくない

俺は恋愛よりもバレーに専念したい

だからもう好きじゃない


って言ってやれよ」





『それが言えたら！俺だってこんなに…！』



苦しんでない そう言おうとした瞬間、



「苦しんでない、悩んでないそう言いたいんだろ。

けどそれ以上にあいつは傷ついてんだよ。

お前が何も話さずに行くから、

何も知らずにずっとずっと傷ついてんだ」



岩ちゃんのいう通りだと思う。



なんの前触れもなく振られて原因も分からないまま

すぐに他の女を連れて歩いてるところを見て

傷つかない人間はいない。


その言葉に何も言い返せなくてただ俺は黙った。




「何年かかるかわかんねえけど待ってろ
って言えない気持ちも俺だってわかる。


けどあいつはお前が思ってるより弱かねえよ

お前が1番わかってんだろ

忘れたのか、ファミレスで言ってた言葉」

　

思い出すのは


“ 及川さんは誰よりも努力する人なので、

部活ばっかりなんて思わないです。

逆にそんなところが好きです “



『…忘れてないよ。

けどAのためを思って俺は！』



「じゃあ聞く。

今、お前は幸せか？」



そんな質問にドキッとする。

自分が幸せかどうか
今まで考えないようにしていたから。



『…幸せじゃないよ。

Aと別れてからどんだけバレーに打ち込んでも

1人になった途端、すごく苦しくなる』


ここで今、幸せだと嘘をついても
岩ちゃんには見破られるだろうから、

隠さずに言えばすぐに岩ちゃんは



「お前と別れてあいつは幸せだと思うか？」



そんなことを聞いてきて、

…もちろんその答えも知ってる。

空港であった時のAは悲しそうで、

Aは幸せなんだ と思えなかった。



「お前もあいつも、いま幸せじゃなきゃ
別れた意味がねえだろ」



岩ちゃんのその一言で、

俺は何やってんだろうと考える。


けどもう２年という月日が経ってしまって

いまさら気付いても遅いんだ。



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