初めての一目惚れ【及川徹】 (ページ32)

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『人多すぎでしょ』

入り口でもらったパンフレットの裏面を見る限り、

これが最後の演奏らしい。

確か午前中にもAは演奏してたって言ってたな

そのことを思い出しパンフレットの中を見ると

演奏者の名前がずらりと書いてある。

『このSって何だと思う？』

何人もの名前が書いてある中

3人だけ名前の横に星マークがあり

Aはその3人の中に入っていて

下の方に☆=Sと記載されている。

「スーパー」

「すごく」

「素晴らしい」

『全部大体同じ意味じゃんそれ』

そんなことを言っていると、

横の男子高校生が
やたら盛り上がっていることに気づいた。

“今年の特待生、ピアノの子らしいぜ“

“可愛いんだろ？“

それが聞こえた瞬間、全てを察した。

『ねえA出てきたら

すごい大きい声で俺の彼女かわいいって叫んでも』

いいと思う？と言う前に全員に止められる。

「「「やめとけ」」」

「さっきのSって特待生なんだな」

「かわいいって噂されてんぞ及川」

「お前マジで叫ぶなよ」

今すぐ叫んで俺の彼女だって言いたい。

そんなことを考えるとカーテンが開き、

そこには3人いて、

司会者に1人ずつ自己紹介されている。

てか待って、ドレスとか及川さん聞いてないんだけど

てっきり制服でするのかと思いきやさすが音楽学校。

出てきたAを見てまっつんもマッキーも

「花ちゃんいいねえ」

「わーお」

なんて言ってる。

ちょっとお辞儀しないで！見えるじゃん！！

危ない！危ない！

内心そわそわしながら見つめていると

Aがピアノに手をかけた瞬間
すぐに雰囲気が変わる。

気がつけばさっきまでそわそわしていたはずなのに

Aの演奏に引き込まれる。

多分、俺だけじゃない。

ここにいる全員が引き込まれる演奏だった。

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