元彼と結婚しました【五条悟】２ -完結-

56 ページ10

・

　
　

それから同棲が始まって、

子作りに関して言及すれば

照れて部屋へと逃げるAの姿を見て笑い

仕事前に彼女の部屋へと行く。
　


心地良さそうに眠っている顔は、

昔となにも変わっていなくて

頭を撫でながら

あの時、約束できなかった言葉を彼女に誓った。

　


『今度こそ、絶対に守るから』

　


その後仕事が終わり、自宅へと戻れば

玄関まで走って来てくれるAを見て

結婚してよかったと実感する。

　

家での時間はあまり好きじゃない。


必然と１人になる時間で

傑の一件やAのことを思い出すことが多く

わざと帰らない日だってよくあった。
　
　
　
　

だけど今は目の前に、Aがいてくれる。

　
それだけで今は帰る理由になる。

　



「ち…血が出てます」

　

家に入ってすぐ焦った様子でそう言われ、

首に手を当てると

さっき祓った時に付着したらしい。

　

高専時代からずっとAと会う前は

何もついていないか周りに見てもらっていたし、

さっきだって鏡を前にチェックしたはずなのに

まさかそこに付いていたとは。
　


絵の具だと無理に誤魔化し、

初めてAの手料理を食べて

あまりの美味しさに聞いてみると



「前にお付き合いしてた人…の家にいたときに」


と気まずそうに答えられた時は

箸を折りそうでは済まないくらいに嫉妬する。

　

　
『僕、これから帰るの遅くなることの方が多いから

気にせずに食べて、先に寝てて。
　
　
あと、ご飯の準備とかいらないから』

　

そんな幼稚くさいことを言って

風呂場に行くと

絶対伝え方を間違えたなとため息を吐く。


　

『…自分から嫌われにいってどうすんだよ』
　



そうやって僕が突き放しても、

必ずご飯を作って起きて待っているAに

日に日に愛おしさが増す。
　

　
結婚してから知ったのはAは働いていること。
　

すぐに会社を調べさせて段取りを進める。
　
　

『へー…結構いいとこじゃん』



“ 自立したくて “


そう言った時の彼女の目はどこか悲しげで

もう十分自立してると思うけどと言いたくなる。

　

『まさか、働いてたとは…』



現時点で結婚を知っているのは、両家関係者のみ。

　


伊地知には伝えて協力を仰いだほうがいいと判断し、
　
　


『明日８時に家ね、っと…』



伊地知に連絡を入れて翌朝２人を対面させた。



　
　


　
・

57→←55

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す