転校生は稲荷崎の元マネージャー１ (ページ28)

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『黒尾さん、変なこと聞いていいですか？』

　

「先に言います、彼女はいません」

　

『ふふ、そうじゃなくて。

まあ私もいないんですけど…』

　
まさかの回答に笑いながらも

黒尾さんなりに気を遣って、

私たちの空気をよくしてくれたことがわかった。
　
　
　

「いがーい！でどうした？」

『黒尾さんがもし今みたいに

私が跳ね除けたりして

怪我しちゃって、

…試合に出られないってなったらどうしますか？』

なに聞いてるんだろうと思いつつ、

やっぱりなしでと言おうとしたときには、

黒尾さんが

　

「まあ普通に辛いよな、やっぱり。
　

でもどうなんだろうな

やっぱ俺は３年だし、主将だし

そういうポジションでもあるから

悔しいとはなるんじゃねえかな」

『そう、ですよね…』

「でもそれが好きな子なら仕方ないって

多少思えたりするかもな」

難しそうな顔で答える黒尾さんを見ながら

その回答を治に重ねる。
　
　

私たちは付き合っていたわけでもなければ

治にとってわたしは好きな人ではない。

ただチームメイトなだけで
　
病室で泣いていた治を思えば

すごくすごく悔しかったと思う。

『黒尾さんって好きな人』
　

いるんですか？と言葉を続けようとすれば

さっと立ち上がり黒尾さんは

　
先に歩いて行こうとする。

　

「はい！この話はこれでおしまい。

烏野のセコムはこえーからな。

冷える前に戻ろうぜ」

なんて言いながら足早に歩いて行ってしまう

黒尾さんを私は追いかけた。

　

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