2日目 昼 ページ37
日陰の､周りから見えない場所に彼女は佇んでいた｡
昨日のような子供らしさは無く､常に周囲に気を配り警戒を怠ることは無い｡
これが彼女の本来の姿なのだろう｡
「…素直に休んで欲しいと言えば良かったのでは？」
「……」
気まずげな顔で視線を逸らす総統をラスベルトはジトリと見つめた｡
婚約者から渡されたアレは酒と偽った栄養剤だと教えられていたのだが…気付けなかった自分たちにも非はある｡
唯一､未成年である彼女だけが被害に遭わなかったようだ｡
「あの子､自分の限界が見えないタイプよ？それこそ詰め込んじゃうでしょうに」
「………あの人たちの血を継いでるならやりかねん」
「バカタレがよ」
なお､この会話はごくごく小さい声で2人しか聞いている者はいない｡
他の幹部も婚約者たちから白い目を向けられており､フリーの幹部も気まずげな雰囲気を漂わせていた｡
そもそも､ここは国のプライベートビーチでありその存在を知る国民も極わずか｡
他国の者もここらの海域は危険と判断し近寄ることは無い｡
ちなみにフラグでもなんでもなくこのビーチから沖に出ると本当に死ぬので冗談抜きで敵は来ない｡
故に護衛など必要無かったのだが､気分転換をして欲しいと連れてきたのが始まりである｡
まさかこうなるとは…誰も思っていなかっただろう｡
「…あー､カイリちゃん？」
「はい､何でしょうか」
「そのー…ごめんな？」
「………普通に休暇を出した方が良かったのでは？」
「仰る通りです」
曇りなき眼で純粋にそう聞かれるもんだから思わず敬語で返してしまった｡
確かに休んで欲しい気持ちは分かる｡
ただ体調を悪くしてしまうのは違うだろうというカイリの気持ちである｡
以前のことがあるのでそこまで言うつもりは無いが｡
「皆様の昼食の後､一度コテージの方に戻ります。何かあればすぐにお呼びください」
「うん…ほんまごめんな…」
「多分父上に絞られるのでお覚悟を」
「ひぇ…」
いや多分というより絶対お覚悟案件である。
来る前に3行で説明しておいたのだ。
カイリ『幹部様 お酒で失敗 従者ダウン』
オカン『把握』
オトン『把握』
兄『お前それ五七五じゃね』
ほんまや。
まあそんなことは置いといて､彼女はまた警戒体制に入った。
誰よりも鋭利で､静かで､見えずらい。
彼女は戦士のサラブレッドと言っても過言では無い。
父も母もそして兄さえも､戦場において猛威を振るう存在であるのだから。
(視線が痛いなあ…)
しかし呑気である。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
明太子なげっと - あぁ…良いところ？で終わっている…！！ゆっくりでよきなので更新お願いします！待ってます！！ (4月16日 22時) (
レス) @page48 id: 9b9289fd09 (このIDを非表示/違反報告)
東の番長第2号(プロフ) - コメントありがとうございます！リアルが忙しく思うように更新が出来ていませんが､お待ちしていただければ幸いです！ (2022年12月25日 7時) (レス) id: 4d2a866f52 (このIDを非表示/違反報告)
古着 - はぁ…()最高！！更新応援してる！ (2022年12月25日 1時) (レス) @page34 id: 9df188f843 (このIDを非表示/違反報告)
おおお - 面白かったです！更新ゆっくりたのしみにしています！ (2021年12月29日 23時) (レス) id: 957fa2aa3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東の番長第2号 | 作成日時：2021年3月4日 21時
