5：不幸はいつも突然に 弍 ページ6
或るホテルの部屋の一室。
そう言った目的の所にしては、随分と高級で高そうな場所。
ふいと、寝台の反対側でいそいそと準備をしている今日の相手を見やる。
かちこちに固められた髪の毛に、きつい香りを放つ香水。
やけに高そうな背広は、肝心の着ている本人とは風格が違いすぎて、なんだか浮いて見える。
いつもの方と殆ど同じ。林太郎さんの足元にも及ばないわ。
早く帰って、林太郎さんに甘えさせて貰いたいのに……。
ふと思った感情を顔に出さないよう、表情筋をきゅっと引き締めた。
「じゃあ、始めようか」
と、声が聞こえたと同時に、私は肩をぐいっと押され、シーツの上に押し倒されていた。
さあ、演技開始。
「まあ、積極的な殿方だこと。
どうか私を楽しませて下さいませね…？」
自分でも驚くくらい、甘ったるい声を出す。
案の定、相手は見事に引っかかってくれたよう。
鼻息を荒くして、貪るように私の首筋に顔を近づけた。そして一心に、口付けをしたりしてくる。
きっともう、疑われる余地はない。
後は、私のペースに追い込んでタイミングを図るだけ。
「ッ、今度は私が、気持ちよくして差し上げますね」
そう言って、相手の上に跨る。
後はもう、首筋に噛み付いて、睡眠薬を盛るだけ。
相手の肩に顔を埋め、そっとその皮膚に歯を立てた
つもりだった。
立てた歯から伝わる感覚に皮膚の柔らかさは無く、私の顔には大きい布が当てられていた。
鼻から伝わる甘い香りは、私の脳を麻痺させている。
「ん、んんーー！！んー！！」
「おやおや、こんなにも簡単にマフィアの首領の奥様が釣れてしまうなんてねえ。滑稽だなあ」
男は、抵抗しようと藻掻く私をいとも簡単に押さえつけ、鼻で笑った。
「僕達だって無謀じゃない。
マフィアに楯突くにはそれ相当の準備位しているさ。
そりゃあ、森鴎外が大切に守っている君の情報を手に入れるのは大変だったし、高かったよ。
まあ、そのお陰で弱味を握られた訳だし、安い買い物だね」
男が悠々と語っている言葉も殆ど届かないくらい、私の脳味噌は麻痺してしまっていた。
ぼやけていく視界の中、林太郎さんの顔がよぎる。
林太郎さん、ごめんなさい。私、失敗しちゃったみたい。
私が迷惑になってしまうのなら、助けになんて来なくていいから。
貴方は、貴方の最適解だけを見つめていて。
ぼんやりとそんなことを思いながら、意識を手放した。
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Lynn - あ、森鴎外（文スト）だ、大好きなんだ。いつか、私優しいので。って言われたいな、口癖でさ (2022年7月27日 11時) (
レス) @page2 id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - この夢主ちゃんのトロッとした包み込むような感じがドストライクです。 そして、森さんも…。燃えます…((そっちかよ。是非とも更新頑張ってください。今なら絶賛僕の口からイチゴオレg…(((殴蹴 失礼しました(笑)_;;ーд#_ (2019年1月6日 21時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - さなさん» 森さんかっこいいですよね！知り合いに森さん推しが少なく寂しいです…！ (2018年7月24日 18時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - 麻鬼さん» ほんわりお母さんキャラがつくれてて良かったです！コメありがとうございます！ (2018年7月24日 18時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - アイカさん» コメありがとうございます！感動するお話が書けてよかったです…！ (2018年7月24日 17時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絵蔵 | 作成日時：2018年6月7日 21時
