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3:幹部の二日酔い ページ4

「中也くん、起きてるかしら?」



こんこんと扉を叩くA。
しかし、その音に反応は無く、ノック音は静寂に消えた。



「もう、寝てるのなら入っちゃうわよー!」



呆れ顔をして小さく溜息をついて、思いっきり思い扉を開けた。

部屋を見回してまず飛び込んできたのは、アルコールの強い匂い。
そして、ソファーの上で何時ものシャツとスラックス姿でで伸びている中也。
Aは其の肩をゆさゆさと揺らし、起こすことを試みる。
すると、小さい呻きを上げて、中也は目を覚ました。


「ん……あぁ、Aさん……はよーございます」


「お早う中也くん。体調はどう?」


「あー……最悪……」


ばりばりと頭をかいて体を起こそうとする中也を手で制し、其の頭を撫でる。


「寝てて大丈夫よ。ちょっとまってて、
今お粥を作っちゃうから。
あ、出来ればお布団で寝ててほしいわ」


云われた通りにのろのろと寝台へと移り、倒れ込む。
その姿勢のまま、虚ろな瞳でぼーっとAの背中を見つめていた。


暫くして、Aがほかほかと湯気を出す器を運び、寝台の側の小さな机の上に置いた。
ぽってりとした木の器によそられた其れのふわりとした匂いが鼻をつく。


「これ……卵粥ですか……?」


「そ、卵は二日酔いによく効くの。
熱いからふーふーして食べてね」


「 あーんしましょうか」と云われて照れる中也を見て「冗談よ」とくすくす笑うA。
ずっと見ていたら気が詰まるわよね、と席を離れ、大量の空き缶や瓶の後始末をしていた。

一通りの掃除も終わり寝台の方を見ると、机の上には綺麗に空になった器。
布団の中には、規則正しい呼吸をして眠る中也がいた。


「良かった、全部食べれたのね。
これでもう大丈夫でしょう」


器を持ち、もう片方の手で優しく頭を撫で、「おやすみなさい」と呟き、Aは部屋を出た。



中也は母親の夢でもみていたのだろうか。
「……母さん……」と寝言を呟き、幸せそうな顔で微笑んだ。

4:不幸はいつも突然に 壱→←2:紅葉さんと若奥さん



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Lynn - あ、森鴎外(文スト)だ、大好きなんだ。いつか、私優しいので。って言われたいな、口癖でさ (2022年7月27日 11時) (レス) @page2 id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - この夢主ちゃんのトロッとした包み込むような感じがドストライクです。 そして、森さんも…。燃えます…((そっちかよ。是非とも更新頑張ってください。今なら絶賛僕の口からイチゴオレg…(((殴蹴 失礼しました(笑)_;;ーд#_ (2019年1月6日 21時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - さなさん» 森さんかっこいいですよね!知り合いに森さん推しが少なく寂しいです…! (2018年7月24日 18時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - 麻鬼さん» ほんわりお母さんキャラがつくれてて良かったです!コメありがとうございます! (2018年7月24日 18時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)
絵蔵(プロフ) - アイカさん» コメありがとうございます!感動するお話が書けてよかったです…! (2018年7月24日 17時) (レス) id: faef4af26b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絵蔵 | 作成日時:2018年6月7日 21時

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