＊37話＊ ページ40
Aside
ﾋﾟｯ ﾋﾟｯ ﾋﾟｯ ﾋﾟｯ
目覚まし？
いや、違うな。
何の、音だろ。
『ん…』
目を覚ますと、見覚えのない天井と、独特な薬の匂い。
でも隣には、大好きな人がいた。
赤井さんは私の手を握ったまま眠っている。
私、地下にいて…。
あぁそうか。
きっとまだ夢の中なんだ。
でも変なの。
夢の中の赤井さんは、いつも泣いている。
『泣かないで』
そっと目元を拭うと、赤井さんは眉をひそめた。
そして、ゆっくりと目を開ける。
『おはよう。赤井さん』
「………お、は…よ…う」
私が笑いかけると、目を見開いたまま返す。
「………A……A…Aっ…！」
ガバッと起き上がって、そのまま私を強く抱く。
「Aっ…よかっ……本当にっ…よかった…っ」
その声は掠れ、震えていた。
でも赤井さんの腕は力強く、私を抱く。
あぁ、なんて幸せな夢なんだろう。
『………ずっと、醒めなければいいのに』
冴えない頭でそう思う。
「………醒めない夢なんてものは無い」
『……そう、ですね』
「……だから、」
赤井さんが私の顔を上げて、目線を合わせる。
赤井さんの顔は相変わらず隈が出来ていて、それでいてとても綺麗だった。
「そろそろ、お目覚めの時間だ」
私は、こんなに美しい泣き笑いを見たことがなかった。
『赤井さ…』
名を呼びかけた私の唇と、赤井さんの唇が重なる。
あたたかい。
自然と涙が溢れた。
唇を離されると、言葉にできない寂しさが襲う。
でもすぐにまた、赤井さんが抱きしめてくれる。
「………目が覚めたか？」
『……私は、生きてるの？』
そう問いかけると、クスクスと赤井さんは笑った。
『これは、夢じゃないの？』
「あぁ。生きてる。お前は生きてるんだ。A」
赤井さんが強く抱いてくれる度に、体が痛む。
でもそれは生きている証拠で。
これは現実だと教えてくれる。
『っ…赤井さん…っ…赤井さん…』
私は赤井さんにすがり付いたまま、泣きじゃくった。
「………おかえり」
そんな私を、赤井さんは泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 693人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルキ - 面白いねー!わかるよー! (2018年7月27日 20時) (
レス) id: 916e6df062 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - めんどく星人さん» ありがとございます(´；ω；｀)お待たせしました(´；ω；｀) (2018年7月26日 2時) (レス) id: 038c3a9f4d (このIDを非表示/違反報告)
めんどく星人(プロフ) - ほんとにおもしろいです。いやほんとに (2018年7月8日 12時) (レス) id: b0ad6e7f2c (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 皆さんありがとうございます*お待たせしました！やっと更新できましたので、楽しんで頂けるとさいわいです(*´ `) (2018年6月23日 17時) (レス) id: 038c3a9f4d (このIDを非表示/違反報告)
結野(プロフ) - 入院、ですか、お大事になさってください (2018年6月21日 0時) (レス) id: f792b77764 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 | 作成日時：2018年6月12日 9時
